【映画評】植物図鑑 運命の恋、ひろいました

仕事もプライベートも行き詰っている平凡なOL・さやか。ある晩、マンションの前で行き倒れていた青年・樹と出会い、「噛みません。しつけのできた良い子です。お嬢さん、俺を拾ってくれませんか」と頼まれる。樹は料理上手で家事全般を担当するという条件で、さやかとの半年間という期限付き同居生活がスタートした。植物に詳しく野草を使った料理を作ってくれる樹のことは、名前以外知らないが、さやかは「彼氏じゃないんだよね…、同居人なんだよね…」と思いながらも、次第に惹かれていく…。

「図書館戦争」「阪急電車」など、著書の多くが映像化されているベストセラー作家・有川浩の恋愛小説を映画化した「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」。この原作の評価はあえて問わないが、実写映画化でこれは、ない。家の前で空腹で行き倒れている見知らぬ男性(いくらイケメンとはいえ…)をいきなり自宅に招き入れて泊めたあげく、半年間の同居生活?? あまりにありえない設定なので、これはもしや夢オチかも…と、あらぬ妄想をしてしまったくらいだ。

物語は、平凡で内気、自己主張さえできなかった孤独な女性が、心優しい男性と出会い恋に落ちたことで、成長するという、ありがちだが、決して悪くないストーリーなのだ。それなのに、出会いや、名前以外わからない、彼には秘密が…という設定があまりにもリアリティに欠けるので、まったく共感することができない。お花の冠や2人での料理作りなどの甘くさわやかな演出も、見ているこちらは、テレというより脱力感が先にたって、これなら「きみはペット」の方が何倍もリアルじゃないか!と叫びたくなる。映画ではまだまだビギナーの岩田剛典は演技は期待できないので柔らかな笑顔で勝負。いうまでもなく、若手演技派の高畑充希の緻密で繊細な演技が唯一の評価ポイントだ。
【30点】
(原題「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」)
(日本/三木康一郎監督/岩田剛典、高畑充希、阿部丈二、他)
(リアリティ度:★☆☆☆☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年6月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。