英国は仏独の決定に従属し金だけは払わされることに

EUをイギリスが離脱すると、イギリスは仏独が決めたことに一方的に従い負担はこれまで通りにするか、大西洋の孤島同然になるかの選択を迫られそうだ。

EU離脱が国民投票で過半数を占めた背景に、キャメロン首相ら残留派がたいへんなことになるというと、それなら、なぜ国民投票なんぞやるのだ、信じてもらえなかったことがある。 

オバマ大統領が自由貿易協定の締結はEUを優先するのでイギリスは列の後ろに並んでもらうと露骨にいったら反発を買ってマイナスだったといわれ、仏独などの首脳も脅迫ととられるような厳しいことはいえなかった。

そして、負担を逃れてメリットだけ享受できることができるとポピュリストが宣伝した。 

しかし、いま明らかになっているのは、EU加盟国とノルウェーやアイスランドなど複数のEU非加盟国とで構成する「欧州経済地域(EEA)」にも入るとすれば商業上の不利は少なくなるが、その場合には、EUの政策形成と決定には参加で出来ず、決まったことをそのまま受け入れる義務があり、負担も引き続き払うということだ。

アイスランドやノルウェーが、そういう馬鹿げた選択をしているのは、人口の割にものすごく豊かな漁業資源を独占するためにあえてマイナス点を甘受する値打ちがあるからだが、イギリスにはそれもない。それに、もともと、小国だから加盟しても発言権は小さいがイギリスは違う。

それがいやなら、ロシアなど域外国と同じ扱いになる。フランスのマクロン経済相は、「英国がおこなEU離脱後もヨーロッパ市場に引き続関与したいのなら、ノルウェーやスイスのように拠出金を払ってEUの予算に貢献するべきだ。もし拒否するなら、英国は完全に(欧州市場から)離脱することになる」「EU離脱なら英国はガーンジー島(英仏海峡の英領小島でEUに参加せず)化し、ちっぽけな国になるだろう」と指摘している。 

いま、シティーの地位が危うい。現在はユーロの決済センターをイギリスに設けることが認められているが、これをフランスやドイツは禁止するだろう。それを見越して、金融機関は、HSBCはパリへの千人規模の移転を検討し、別の銀行は従業員にロンドンから移転することを前提に心づもりを始めるように指令を出した。

日本人にとっての教訓だが、第一は、TPPでもなんでもそうだが、 国際的な取り決めの外に出ると、制度についての発言権はないのに、ルールを実質受け入れさせられることが多いと言うことだ。 

第二は、全体像を示さないポピュリストの口車に乗るとこういうことになる。憲法第九条の勝手気ままな解釈をふりまわして、安全保障が憲法の独自の解釈から導き出されるようなことをいい、他の問題は一切無視して安保法案廃止だけを政策に選挙を戦うなど許しがたいと言うことだ。 

(参考;拙稿)「英国はEUに残留しても準加盟国化する」
https://agora-web.jp/archives/1670659.html