旧東欧から学ぶ日本共産党の「実相」

日本の政界の動きは新聞社の電子版やネットでフォローしているだけだから、大きなことをいえない。日本は現在、参議院選の終盤を迎え、全土は騒々しいだろう。門外漢は口を閉じているに限る、と考えていた。その時、一枚の写真が目に留まった。民進党の岡田克也党首と共産党の志位和夫委員長がどこかの選挙運動の集会で手を握り合って何かを叫んでいるではないか。両政治家は政策で喧々諤々の論争戦を展開しているのではない。手に手をとって政策を国民に訴えているとしか考えられないシーンだ。


▲オーストリア国民議会(2012年5月撮影)

岡田党首は転向したのか、それとも志位委員長が脱党したのか。もちろん、そうではない、両政治家は野党共闘で選挙応援しているのだ、狙いは、自民党候補者を落とし、ひいては自民党政権を少しでも震撼させたいという野望があるのだろう。

当方は岡田さんの行く末を案じる一人だ。政治の話ではない。網膜剥離を患い、好きな本も自由に読めなくなった人間・岡田さんに同情しているからだ。当方も2年前、網膜剥離の手術をしたことがあるので、岡田さんに情が行く。同病相憐れむ、といった世界だ。

その岡田さんが共産党委員長と手を取って選挙運動をしている写真をみて、「やっぱり、あの報道は事実だったのか」という空しい思いが湧いてきた。日本からの報道によれば、民進党と共産党は自民党政権打倒の為に野党共闘で合意したという。当方が見た写真はその報道が正しかったことを証明していたのだ。

共産党という看板を掲げている以上、言わざるを得ない。共産党の世界観、人間観は間違っている。オーストリア国民は共産党が非人間的、欺瞞と虚像の世界観であることを知っている。共産党の実相を誰よりもよく知っているのがオーストリア国民だろう。
同国には、一応、共産党は存在するが、戦後70年が過ぎたが、同党は過去、連邦レベルで議会の議席を獲得したことがない。有権者は共産党がどのような政党かを理屈ではなく、冷戦時代に目撃してきたからだ。

オーストリア国民は、ハンガリー動乱(1956年)、チェコスロバキアの民主化運動「プラハの春」(1968年)、ポーランドの民主化(1989年~)などを目撃し、旧東欧諸国から逃げてきた200万人余りの亡命者を収容してきた。日本共産党の志位委員長がウィーンで選挙演説をしてみれば理解できるだろう。オーストリア国民は極東アジアからきた政治家の妄想話に哀れを覚え、涙を流すかもしれない(「『共産党』を“誤解”している友へ」2015年11月8日参考)。

そんな政党と選挙戦略とはいえ連携するとは岡田さんは正気だろうか。多分、党内のゴタゴタで疲れ、正しい判断が下せなくなったのではないか。ちなみに、吉田兼好は徒然草の中で「友とするのに悪き者」としてして7例を挙げているが、6人目は「戯言(そらごと)する者」だ。岡田さん、あなたの横にいる人は誰ですか?


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。