選挙が18歳から投票できるようになりました。政府はメディアも抱き込み、様々な形で若者の参政を訴えています。実際にどれぐらいポピュラーになるのかはその仕組み次第だと思います。
日本の選挙とAKBの総選挙を比べるのは失礼だと十分承知で書かせていただきますが、なぜ、AKBの総選挙は盛り上がるのでしょうか?上位の得票数は年々上がり続けています。また、6月の選挙が一種のイベントと定着しつつあります。多くの若者があそこまで注目するその理由はいつかあると思います。
まず、自分の応援したい人が明白にいることでしょうか?例えばAKBの総選挙が「政党政治」であれば20近くあるといわれる派生ユニットに投票することになりますが、当然その中には好き嫌い、活動拠点をベースにした地政学的偏重が生じます。そうなるとどうしても焦点がボケてしまいます。
二点目に、立候補するメンバーは1年間の活動を経て、昨年より少しでもランクアップするために必死に自己アピールをします。つまり、国政選挙のように突然現れた候補者を非常に短い時間の中で判断するという理不尽さがありません。時間をかけて特定の人を応援し続けるという仕組みがそこにあります。
政治家とは何か、といえば市民の声の代弁者であるわけです。その人が本当に信じられるのか、言葉に齟齬はないのか、をわずか5日から17日という短い公示期間で判断しなくてはいけません。今回の参議院選挙でも山間部にお住いの方から「顔も名前も知らない人ばかりでどうして良いかわからない」という声がありました。
若者が最も望むのがネットを通じた情報とネット投票。しかし、これは若者だけではなく、多くの日本の方が望むところであります。山間部に住むお年寄りがネットを使うのか、という疑問は確かに残りますが、少なくとも情報を広範囲に提供し、候補者の顔を見せ、声を聞かせ、議論をさせるべきでしょう。最近、若い議員が不祥事を起こす事件が繰り返されましたが、立候補する方も投票する方も十分に意思疎通ができていないからこそ発生した事件だと思います。
ネット投票の最大のハードルはセキュリティ上の問題と本人確認とされています。しかし、マイナンバーが国民に行きわたり、高いレベルでの社会保障やマネーの動きを掌握できるようになっています。ならば、選挙だけ本人確認とセキュリティ上の問題が残されているという理由は言い訳に過ぎない気がします。やる気があるのか、ないのか、その問題でしょう。
ネット投票解禁のやる気がないとすれば政党政治の崩壊の可能性がその背景にあるかもしれません。少子高齢化も手伝い、投票率は高齢者ほど高いという長年の相関関係は無視できません。特に最近の若年層(20代)の参政率(投票率)は32%程度で50代から上の60%以上の半分に留まっています。ただでさえ少なくなっている若者が高年者層の半分しか投票に行かないという事実は候補者や政党は当然、50代から上の人向けの政策を有利にするしかないのです。こんなことは自明であります。
政治家は国民の代弁者であるならばそれこそ公共の放送網を駆使してでも国民に参政させる意思を高め、議論をさせ、候補者のすべてをさらけ出させるべきでしょう。ポッと現れる著名人が売名のごとく、テレビに英雄気取りで映っているのはゴシップ以外の何物でもなく、もっと真剣勝負を見せてほしいところです。
野党は相手の批判ばかり、と言われます。キッコーマンの茂木友三郎名誉会長が最近の選挙に関して若年層の時代からディベート教育を取り入れていくべきだと述べています。それにより選ぶ方も選ばれる方も真剣勝負になります。考えるし、勉強もします。これぞ本当の参政でしょう。
参政のプロセスを改善することで若者は政治にもっと興味を持つことでしょう。そして政党政治という守られた体制を再構築する必要もあるでしょう。現代の民主主義と政党政治は必ずしも相性が良いようには思えない気がします。政治は出来レースをするのではなく、案件ごとに国民の声を反映させるぐらいの全く新しい選挙システムができれば日本の政治は面白くなると思います。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 7月10日付より