バックパッカーから見た危険な日本人 --- 鈴木 健介

海外にいる日本人で危険なタイプとはどのような人間だろうか。バックパッカー目線で考えてみた。数字や統計で表れるデータとしてではなく、私が実際に現地で会った日本人一人一人から、その危険度を推測するので、多分にバイアスが入ってると思う。ここでいう危険度とは、テロや事件に巻き込まれる危険度であって、病気や交通事故は含めない。なお、今回のバングラデシュのテロ事件についての感想とは関係ない。

1・ボランティア
2・バックパッカー
3・政府機関
4・商社ビジネスマン
5・短期旅行者・年金生活者
6・ジャーナリスト

1・ボランティア

現地の人と共に暮らし、現地の人の声を聞き、ボランティア活動をする日本人。井戸を掘ったり、病気の看病をしたり、食料を配ったりする人々だ。彼らは大抵、単独や少人数で現地に入る。彼らは長期間その地に留まり、現地の服を着て現地の言葉をしゃべる。衣食住が共にある。日に焼けて真っ黒で民族衣装を着ている場合、遠目で見たらまず日本人だとわからない。彼らはその国のどこのエリアが危険かを現地の人とともに熟知しているので、そういった場所に近づかない。キナ臭いことが起こっても、現地の人々が彼らを守ろうとするので、日本人の中では安全な部類にはいる。

2・バックパッカー

長期のバックパッカーは、ボランティアの人々と同じように、衣食住を現地の人と共にする場合が多い。危険な場所もよく知っていて、そこに近づくのを避ける。治安の良くない国においても、どこが危険でどこが安全かを判断して行動する。ボランティアとバックパッカーの大きな違いは、前者が現地の人々の「為」になることを目的にしてるのに対して、後者は特に何もしない、自分のしたいことを追求するのみである。紛争国でバックパッカーが捕まったりする事件が時々あるが、彼らは危険だとわかっていて、功名心や好奇心で渡航してしまう場合と、現地で安全だという細かな情報を知りすぎたが故に大局を掴めない場合とがあり、危険に巻き込まれるが、大抵のバックパッカーは、危険な国や場所自体に近づかず庶民の生活に溶け込むため、安全な部類にはいる。

3・政府機関

ここでいう政府機関とは、開発援助や途上国支援などで渡航する人々のことを言う(それしか会ったことがない)。それには2種あり、1つはボランティアの様に実際に現地の中に入って調査や実地をする人と、1つは渡航国の政府高官や役人と交渉する人。前者はボランティアの様に現地の知識が深い場合が多いので、安全・危険についても良く知っている。余談だが、給料を貰って公人として行動する自分の限界を嘆き、無償のボランティアの道へ向かう人もいる。後者は渡航国の富裕層とばかり付き合うことが多いので、庶民のことや現地の本当の実情を良く知らない場合があるが、通訳等、現地の人間が周りをサポートしている場合が多いので、安全でもあり危険でもある。

4・商社ビジネスマン

政府機関の後者と同じく、現地の一流企業や富裕層と接する場合が多く、衣食住も、スーツに高級レストランに高級ホテルという場合が多く、貧富の差が大きい国ほど狙われやすい。現地の資源を搾取しているという誤解を招く事も多いため、危険である。私はたまたまなのかもしれないが、「現地の人に雇用を作ってやってる」等、上から目線の人に会うことが多かった。例えそうでなくても、高級住宅街に住んだり、身なりがあまりに良すぎることは、人の目をひき、危険な目に合う可能性も高くなる。

5・短期旅行者・年金生活者

大型連休で3〜10日ほど旅行する短期旅行者は、観光地や繁華街を訪れることが多く、国と場所によっては危険な場合がある。特に女性の一人旅や20代の女性二人旅の軽率な行動が危険を招くことが多い。軽率と言っても、日本では問題にされないような些細なこと、例えば露出した服装や、軽いボディータッチ、異性との2人だけの食事などが、相手に誤解を与える場合が多い。知らずに宗教的タブーを犯してしまう場合もある。観光地や繁華街でテロに合う可能性は無くはないが稀であり、通常のトラブルに巻き込まれることのほうがよっぽど多い。年金生活者は物価の安い東南アジアの、しかも日本食料理店でしか会ったことがないが、その国に滞在する期間が非常に長いのに、日本人同士でつるんで、現地のことにはあまり興味がなく、あるのはゴルフ場や夜遊びや外国人用の病院など、現地の人と生活が乖離してる人が多かった。なのでよく目立つ。彼らもテロに遭う可能性は少ないが、日常のトラブルに遭う可能性は高い。

6・ジャーナリスト

正規の報道関係者よりも、フリーのジャーナリストやカメラマンは、紛争国や貧民街に潜入することが多く、現地の知識や内情は、ボランティア並みに詳しい場合が多いが、実際に危険地帯に入ってしまうため、海外にいる日本人の中では一番危険である。ヨルダンのアンマンや、パキスタンのペシャワールなど、紛争国の隣国の玄関口を拠点にしてる場合が多い。

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以上、私が旅をしている間、様々なタイプの日本人と出会ってきたが、1→6になるにつれて、テロや事件に巻き込まれる危険度が増えていくように思えた。私が出会った人がたまたまそうであって、全部がそうであるわけではないことは言うまでもないだろう。これに病気や交通事故を含めたら、ボランティアとバックパッカーが危ない部類に入る。

確かにここ最近、世界中でテロ事件が立て続けに起こっている。それに遭遇しないよう対策を練るのはもちろんだが、テロの全てを避けることはできない。まず気をつけるべきは、通常の事件を避けるのと同じように、人が多く集まる場所に近づかない、人気のない道を通らない、夜道を歩かない、デモや政治・宗教絡みのイベントには近づかないなど、基本的なことをきちんと守ることが、ひいてはテロから身を守ることにつながると思う。それでも、なんでもない他愛のない日常すらテロの標的になる時代がやってきたとしたら・・・。それについてはまた違う機会で述べてみたい。

次回はバングラデシュを旅した思い出について。

鈴木 健介

旅と音楽と哲学が人生の3本柱。
CD「善悪無記の形相」「ドクサ」発売中。
旅での思索を書いた日記、「けんすけのこばなし」より