「2045年 未来の学びを考えるアイデアソン おとなの部」。
こどもの部の翌週、デジタル教科書教材協議会DiTT主催、NPO「CANVAS」企画協力で東京・赤坂にて開催しました。
学校の先生、関係業界のかた、一般のかた、さまざまな方に参加いただきました。
今の学校の問題は?こどもの部と同様、まずそれを聞きました。
「教育格差」「教師依存」「創造性の欠如」「いじめ」「先生が足りない」「一方通行の授業」「画一性」「社会とのつながりの薄さ」「現場の裁量の低さ」「地域格差」「塾との分担」・・・でるでるでるでる
4グループから提案が出されました。
まず「バーチャルシェアハウス」。バーチャル空間で学びたいことを一緒に学べるコミュニティを作る。
→寺子屋をITで再現するものですね。これは2045年をまたずスグ作れる案です。
続いて「金八2045」。学習履歴やいじめモニタを実装する「金八ロイド」と、創造性・コミュニケーションを育む「リアル金八」を組み合わせる。
→AI/IoTと人、バーチャルとリアルの組み合わせで21世紀スキルを学ぶ、というアプローチ。
「データベースプラットフォーム」。「知識を一斉に教える教育」から、一人ひとりの状況に応じて関心・体験を共有する学びへと転換する手法。
→先生の役割が、知識の伝授から、サポート、ファシリテートへと変わることを意味します。
そして「ロボットコミュニケーション」。人間はロボットに危害を加えない、といった新三原則を作り、ロボットと共存しながら学ぶシステム。
→こどもの部で一人1台ロボットという案がありました。必須アイテムですね。
さて、こどもの部と比べてみると、さすがおとなです。「空中に絵を描けるクレヨン」「最強スーツ」「すべり台で登下校」といった技術者を困らせる案はありませんし、「先生がいない学校」「授業がない学校」といった先生を困らせる案もありません。
その分パンク度は低く、2045年を待たずともスグ開発できそうな教育環境が並びます。こういう場に参加するかたがたは、デジタルのデメリットから入って、できない理由を並べる性質の連中とは違って前向きなので、スグ一緒にやりましょう、と言いたくなります。
ただ、まとまった提案に至らずとも、なるほどもっと煮詰めたいというアイディアもたくさんありました。例えば「1人1データベース。」学習履歴、関心事項など生涯にわたって使うDBを作り、それをマッチングしたりビッグデータ活用したりするのは重要課題になりそう。
知識を脳にダウンロードする。それが可能になれば、例えば「100テラ1000万円東大パック」などのビジネスが発生するという意見。
→可能になるでしょうし、膨大な教育ビジネスの未来が予期できます。基本パック無料版は、税金で手当て?
「ヒトラーと一緒にものづくり」というアイディアを出した女性がいました。反社会的な人や歴史上の怪人、つまり考えや生き様の異なる人と擬似バーチャルで交わって考える学び。
→2045年には可能になっているでしょう。そしてこの構想は具現化する価値があると思います。
共通するのは、「知識を授ける」教育は機械に任せればよく、必要な学びはもっと別のところにある、という考えですね。そしてそれは、創造力やコミュニケーション力にとどまらない、もっと強く「生きる力」といったものなのでしょう。
震災後の停電で、平気で楽しく過ごしていた子と、パニックになった子の差は何か。AI・ロボット社会になった後の生き抜く力とは何か。と問題提起する人もいました。おとなが考えるべきは、そういうことでしょう。
10歳で限界集落暮らしをさせ、また学校に戻し、15歳で社会に出し、改めて学び直させる、それをAIでサポート、という案を出す人もいました。その趣旨や設計の可否はともかく、「学び直し」「生涯学習」を重視する点は共有。
30年後の学び。「ダイヤル回して手を止めたから30年ですからね。」との声。そうか、あれは通信自由化の頃の歌だ。湯川れい子先生作詞だ。これから30年、どう変わっていますかね。
引き続き考えていきましょ。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年7月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。