「好きなことで生きていく自由」が不自由になる危険性

「言論プラットフォームアゴラ」に2日前の本ブログ記事が転載され、アクセス数でトップになりました(写真)。参議院選挙が終わり、都知事選に読者の興味が集中している中、旬ではないテーマながらたくさんの読者の方に読んで頂いたことには、それなりに価値があると思っています。

最近、ブログを書いて「プロブロガー」を目指す人が多くなっていると聞きます。プロブロガーとは、ブログに記事を書くことを生業にする人という定義だと思います。自分のブログのPV(ページビュー、閲覧数)を増やし、メディア化して、バナー広告やアフィリエイトによって収益を上げるという方法で稼いでいく人たちです。

ブログ記事がYahoo!ニュースに記事が紹介されたり、アゴラのようなキュレーションサイトでアクセス数で上位に入ることが多くなり、このブログのPVも上がっていると思います。しかし、私の本職はプロブロガーではありませんし、これからもプロブロガーになるつもりもありません。

プロブロガーを目指している人の多くは、サラリーマン生活の不自由から、好きなことをして生きていく自由を求めている人だと思います。確かに、自営業として独立すれば、時間の自由は確保できます。お昼からジャグジーに入ったり、夕方の陽が高いうちから蕎麦屋で日本酒を飲むといったライフスタイルは、会社員にはできない、それなりに快適な環境です。

しかし、人生には時間と並び「お金」というもう1つの制約があります。プロブロガーの人たちがどのくらいの収入なのかはわかりませんが、広告だけで生計を立てていくのは、かなりハードルが高いし、不安定です。最近はコンテンツを切り売りできる方法もあるようですが、有料で自分の原稿を読んでもらえる人は、名前を知られているほんの一握りだけです。

何より大きな問題は、「好きなことを書いて自由に生きていく」という目的で始めたことが、いつしか「お金のためにウケることを書く」という本末転倒な展開になってしまう危険性が高いことです。多くの人に見てもらうためには、過激なタイトルを付けて、その時の旬なテーマに切り込んでいくことが求められます。それは、必ずしも好きなこととは限らなくなってくると思うのです。

私は、自分の興味のある分野にしか文章を書きたいと思いませんし、専門外のことについて的外れなことを書けば、読者の信頼を失いかねないと思っています。だから、PVやサイトのランキングは結果であって、目的にすることはありません。楽しく続けるためには、商売にしないことが大切だという考え方です。

私にとってブログとは、読者の方との価値の交換であり、自分自身の頭の整理と備忘録だと思っています。情報を提供することで、逆に情報を得られることがある。そして、ブログがあることで、情報を集めるプロセスが見える化できる。だから続けられるのです。

これからもプロブロガーとは違った立ち位置から、情報発信を続けていこうと思っています。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。