政治を決めるのは老人ではなく無党派層

都知事選の結果をちょっと定量的に分析してみた。次の図は投票者全体の何%が誰に投票したかを計算したもの(政党支持率×得票率)だが、自民党(37%)の中でも小池氏が増田氏を上回ったばかりでなく、支持政党なしの無党派(36%)の中で、小池氏が18%と増田氏の3倍の支持を得たことが決定的だった。


支持政党別の得票率(出所:毎日新聞)

増田氏は自民党支持層の40%を取ったので健闘したといえようが、無党派層の支持は鳥越氏より低かった。このグループで勝てない候補は勝てない、という都知事選の経験則は今回も成立した。自民党の東京都連が小池氏を推薦していれば楽勝だったので、石原伸晃会長の責任はまぬがれない。

鳥越氏は、ほんらい彼の知名度を生かして取るべきターゲットだった無党派層で小池氏の4割しか取れず、民進党支持層ではそれより少ない票しか取れなかった。鳥越氏にもっとも忠実だったのは共産党の69%だが、しょせん支持層が5%しかいないので、野党共闘は役に立たなかった。

ここからいえるのは、面子にこだわった自民党の失敗と、野党共闘にこだわった民進党の失敗が、無党派層の支持を「腐敗した都政を改革する」という小池氏に集中させたということだ。特に民進党は小池氏を支持する選択肢もあったのに、「保守分裂」で勝てると読んで、最悪の候補者を選んでしまった。

もっとも注目すべき数字は、投票率が59.7%と、前回より14%ポイントも上がったことで、これは約150万票も増えたことになる。前回の舛添氏が今回の増田氏、前回の宇都宮氏+細川氏が今回の鳥越氏に相当すると考えると、今回の合計は前回より約90万票少なく、これに150万人を足すと小池氏の290万票の8割に達する。つまり小池氏を当選させた主役は、前回棄権した無党派層だったのだ。

以前の記事でも書いたように、日本の政治は老人が決めるという「シルバー民主主義」は錯覚で、政治のゆくえを決めるのは、有権者の半分を占める圧倒的多数派でありながら、ほとんどが棄権する無党派層なのだ。今のところ、どの党も彼らの支持を得る政策をもっていないので、「ブルー・オーシャン」は広い。日本の政治は、これから大きく変わる可能性がある。