リーダーなら上司を先読みして部下の仕事を把握する

※インタビューに協力いただいた石川和男氏

「上司に決済をもらうのに時間がかかる」「いつ行っても外出している」「来客中でタイミングが合わない」「その結果、仕事が思うように捗らない」, etc.

スピードが求められる受注競争の仕事なのに、決済が下りず入札できなかった。関係各部署にも迷惑をかけてしまった。自分の仕事は順調に行っているのに上司とのスケジュールが合わないで失敗してしまった。こんな経験はありませんか?

仕事が遅いリーダーは、上司のスケジュールを把握していないために、決済の許可ひとつ取りにいくにしても外出中だったり会議などでタイミングが合いません。さらには会議前で忙しい上司に話しかけてしまい、上司の機嫌を損ねてしまいます。

●すべてはスケジュール調整にあった

――上司とのコミュニケーションが取れない場合どうするのか?税理士であり、時間管理の講師などをつとめる、石川和男氏(以下 石川)は、上司のスケジュールの把握はもちろん行動まで先読みすることが必要と述べている。

「私も過去に、このような失敗がありました。決算時に改正版の会計ソフトが必要になったのでが、高額のため、購入には上司の決裁が必要でした。必要なソフトなので簡単な稟議書を作成し提出すれば購入できます。それなのに、使用するのにまだ3週間ほど時間もあるしと、稟議書を作るのを後回しにしていました。1週間が経ち、決済をもらおうとした矢先、上司が海外出張に出ることを知ったのです。」(石川)

「出張間際の1時間前に何とか稟議書を作成し、決済を得ましたが、もし決済をもらえずソフトが使えないと、決算業務が大幅に遅れるところでした。上司を見送りながら、冷や汗をかいたのを覚えています。」(同)

――このような体験から、どのような改善が必要になるのだろうか。一般的には、上司のスケジュールの把握はもちろん行動まで先読みするようになるだろう。期末は決算業務で多忙だから早めに相談する、年末年始、GW、お盆休みなど長期休暇の前に必ず決済をもらうなどの工夫が必要になる。

「金曜日の午後は休日前で機嫌も良いので、話を聞いてくれやすく許可も下りやすい。逆に月曜日の朝は通りづらいので何とか金曜日までに仕上げて提出しよう。重役との会議がある前は話しかけづらいが、会議の後はほっとしているので話も通りやすい。ランチ前は機嫌が悪いけど、ランチ後は機嫌が良い。上司の行動を日毎の行動ベースに落とし込んでシミュレーションするようになりました。」(石川)

「さらには、上司の行動やスケジュールだけでなく、思考も先読みしていたのです。上司は相談したら、こういう考えや判断をするだろう。結果、急な案件が上がっても、対応ができたのです。」(同)

――仕事が速いリーダーは、月単位で上司のスケジュールを把握し、さらに毎週月曜日の朝に、上司の1週間のスケジュールを確認するということだろう。どのタイミングで稟議書などを提出するかといった自分の要件のために把握するだけではなく、上司からどんな指示が来るかを把握することで、自分の仕事とのバランスをとるセンスも必要になる。

●デキる上司は部下を掌握しているものだ

例えば、取締役会がある日は役員である上司の指示で、急ぎの資料作りが求められるとしよう。時間に関係なく突然呼び出されて作成の指示をされる。この時に連絡がつかず不在だと、使えない部下の烙印が押されてしまう。これは役員の身勝手そのものだが、「会社とはそんなものだ」と石川は述べる。実は私もこの点は大いに共感する。

「仕事が速いリーダーは、上司の予定を先読みして行動するのです。また仕事が速いリーダーは、部下のスケジュールも把握しています。この部下は今週の前半は請求書の入力があるから忙しい。中旬なら手が空くな。スケジュールに沿って仕事の段取りを考えていくのです。指示が的確なので、部下もパフォーマンスの高い仕事をしてくれます。資料も精度の高いものに仕上げてくれます。」(石川)

あなたは、上司の予定を先読みしていますか。もしくは、部下の仕事を把握していますか。この機会に振り返ってみては如何でしょうか?

石川の新刊
仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』 (明日香出版)

尾藤克之
コラムニスト

PS

7月26日開催の「第2回著者発掘セミナー」は好評のうちに終了しました。多数のご参加有難うございました。なお、次回以降の関連セミナーは8月末頃に公開する予定です。