終戦の日にBS11の番組で靖国神社についてお話しした。番組の視聴者が若い人主体だというので、少しいろいろ考えることもあった。
私は議論が錯綜してしまった以上は、玉虫色の解決をするしかないと思う。
そもそもの問題は、戦後、国家神道をやめるときに、さまざまな問題をきれいに整理しておかなかったことにある。
誰を国家的な英雄として祀るのかといったことは、神社が決めるような話にはなじまない。政府がしっかりした名簿を整備して、神社に引き継ぎ、あとはおまかせするということであるべきだったが、戦後の混乱のなかでは、そこまで、考えが及ばなかったとしてもやむを得ないし、昭和30年代くらいまでは、誰もうるさいことはいわなかった。
ところが、そのころから、左派からは靖国神社は軍国主義の象徴といいだして政治問題にしてしまい、それに、反撃するかたちで右派が国家護持だ公式参拝だと逆利用を図り、さらに、いわゆるA級戦犯合祀問題が起きた。
この問題のおこりは、BC級戦犯を合祀したらという話が先に持ち上がった。BC級戦犯の合祀も理屈には合わないが、不当な処罰も多く含まれ、この合祀にほとんど反対はなかった。そして、悪乗り気味にA級戦犯合祀問題が出て、神社側が勝手に合祀してしまった。そして、いったん合祀したら分祀できないという宗教理論を持ち出して話をややこしくした。
しかも、左派の議論にのって、中国が外交問題化した。これは、中国なりの合理性もある議論だった。中国は日中戦争について「一部軍国主義者の仕業であり日本人民は敵でない」という整理を国交回復以来してきており、その象徴として靖国参拝が取り上げ、それを日本側も一理あるとして反応した歴史的経緯がある。
これは、日本にとっても、主として一部軍国主義者が悪かったのか、国民全員が悪かったのかというのは、永遠の課題だが、中国から、「日本人民も被害者です。悪かったのは一部軍国主義者です」といわれて、全面否定するつもりは日本人にあるまい。
いずれにしても、A級戦犯合祀問題を解決すれば中国は少なくともあまり問題にしないと理解されてきたし、中国側のこうした立場をまったく無視するわけにはいかない。
一方、韓国までが中国の尻馬に乗ってきたが、日本と戦った立場でなく「植民地支配」を問題にするならA級戦犯合祀問題を解決しても永久に解決できなくなるので、こちらは徹底的に無視するしかない。
私が靖国神社を大事にしたいのは、戦死者のほとんどは、自分が神として祀られることを好意的に受け止めていたと思うからだ。その期待を裏切りたくないし、そこに、天皇陛下や首相が参拝もしてほしい。
しかし、国家護持は宗教色がいささかでも残る限りできない。公式参拝については、そもそも、伊勢神宮などに参拝するのと同じで、靖国の特殊問題はそもそもなく、右派のプロパガンダだと思う。
解決策としては、靖国神社が分祀に応じてくれれば、あとは、それで参拝に問題なしとしてしまえばよい。それがダメだとなると、玉虫色しかない。
私の一つの提案は、靖国神社の鳥居の前に、無宗教の慰霊施設をつくり、どの方向からも参拝できるようにして、靖国神社をあえて拒否する人は横から参拝し、靖国神社も一緒にお参りしたい、あるいは、そうであるかどうか曖昧にしたい人も、真正面に参拝するようにしてはどうか。
そういう形なら、天皇陛下も首相もお参りしたのが靖国神社なのかどうか心の中の問題となる。