どこまで利権政治をしようというのか、地方議員年金

大西 宏

油断するとこうなってきます。自民党本部に地方議員の年金を検討するプロジェクトチームが発足し、また全国都道府県議会議長会が、地方議員が年金に加入できるように法整備を求める決議をしたといいます。
地方議員年金、復活の動き 自民本部検討「人材確保に」:朝日新聞デジタル : 

兵庫県の野々村議員を端に発し、政務活動費の不正支出、また不透明さに関心が高まりましたが、もう喉元すぎればということでしょうか。いまだに、自民党都議九人が、「本人や家族らが所有する物件に置いた事務所を都議会自民党に貸し出す形で、政活費から賃料として毎月二万五千~二十万円を受け取っていた」とか、「支出先が都議本人の場合でも、個人情報を理由に領収書の氏名が黒塗りにされるなど、使途の妥当性を検証できないケースも目立つ」などの状態のようです。

東京新聞:都議政活費8億4895万円 領収書黒塗り 検証に壁 15年度報告:社会(TOKYO Web) : 

地方議員には、政務活動費だけでなく、議会や委員会に出席した日数に応じて支払われる「費用弁償」という第三の給料まであって、まださらに使える税金はとことん使うという発想はもう呆れ返るを通り越して立派なものと賞賛すべきでしょうか。

東京新聞:自公都議、会費の7割「新年会」 15年度の政務活動費公開:政治(TOKYO Web) :

それだけ、仕事の成果をもたらしていればいいとしても、成果を測る尺度がありません。地方議会や議員が政策立案をしているかというと、政策はほとんどが役所がつくっていて、議員提案による政策的条例提案は、わずか0.159%という、まったくお寒い状態のようです。

地方議会の中で実際に提案されている議員提案の中身について見ていくと、さらに残念な数字が並ぶ。

ただでさえ少ない議員提案のうち、55.5%は国などに対して要望を文章で出すだけの「意見書」であり、条例提案は18.2%しかない。

政策的条例提案はその議員提出の条例案の8.1%でしかなく、議案全体から見ると、この議員提案による政策的条例提案は、わずか0.159%しかないのだ。

自治体の数で全体の176件を割ると、1自治体あたり0.19件しかしていない。つまり、議員による政策的条例提案は、年間、5自治体の中で1件あるかないかぐらいというのが、現状の地方議会のレベルなのである。

議員による政策的条例提案はわずか0.143%という地方議会の現実 – アゴラ :

この年金復活への動きは地方政治の人材確保のためというのが表向きの趣旨のようです。確かに、地方では、議員の「成り手」がいなくなってきているという現実はあります。昨年の統一地方選では501人が無投票当選で決まり、総定数2284の21.9%を占め、統一選の都道府県議選としては過去最高の割合でした。つまり5人に1人は選挙の洗礼を受けていないのです。

地方議員年金、復活の動き 自民本部検討「人材確保に」:朝日新聞デジタル : 

しかし、それは地方政治の魅力が低下し、地方政治への関心が低いために、その結果、選挙をしてもベテラン議員が通るという構造ができてしまっているからです。

いくら、年金を復活させても、新たな候補者はでてこず、新陳代謝も起こらず、結局はベテラン議員の懐があたたまるだけで、さらにその悪循環が固定化され、さらに地方政治を停滞させていきます。

注目したいのは、大阪では、維新も自民党大阪府議団も、厳しい財政状況のなかで公費負担を増やす都道府県議長会の決議に反対していることです。

対立しているようで、現実はなあなあの慣れ合いの保革という対立軸では政治の緊張感が生まれず、むしろ大阪では都構想で厳しく対立しあったために、府民の目線に立たないと生き延びることができない状況が生まれたということでしょう。

地方政治を強化するのは、議員にさらに金銭的なメリットを与え、「成り手」を増やそうとすることではなく、議員の活動実績や活動成果を評価できる仕組み、その「見える化」をはかっていくことではないでしょうか。