老後の1億円、作れますか?

岡本 裕明

日経ヴェリタスに「資産1億円への道 富裕層700人調査、『投資』『堅実』カギ」とあります。1億円、遠いようで近い人もいるでしょうし、宇宙人の会話のように思う方もいるでしょう。何で1億円なのか、そのあたりの設定も気になります。老後のことを考えるといくらあっても不安は消えないとおっしゃる方もいらっしゃいます。どうやったら1億円に到達できるのでしょうか?

記事の中身は投資による収入と浪費をせずに資産を減らさないということがキーワードになっています。この手の記事にはつきものでどれも当たり前の話で秘術があるわけではありません。ただ、私がいつも思うことはこれを見てまず8割の人は支出の制限にだけ走ってしまうことです。

無駄を省くのは日本人にはお手のもの。いわゆる活用術は主婦の日々の工夫からスタートしたとも言えます。余りもので食事を作るのも風呂の浴槽の余り湯を洗濯に使うといった昔からある工夫や倹約は日本独特のものとも言えます。

それゆえにお金のことも貯める=使わないという等式が出来てしまいそうになります。ではお金を使わないとお金がたまるのか、といえば私はこの図式が必ずしも正しいとは言えません。お金を使うことでお金が帰ってくることもあるのです。

例えば人との集り。「お付き合いはお金が出ていく」とされます。では一切合切お付き合いをやめるべきかと言えばウィンウィンの関係を築ける人との接点はお金をかけてでも維持すべきです。それは「自分よがり」からの解放でもあります。一方でほどほどにしておかないといけない付き合いは「クレクレ星人」達であります。人のことを持ち上げ、いい気にさせて浪費させたり、御馳走させてしまうようなタイプは価値がないだけではなく時間の無駄であります。

やみくもに1億円を貯めるという価値観は私にはなくてこのまま90歳から100歳まで生きた時どんな生活をするのか、その自活にはどうしたらよいのか、まずこう考えます。老人ホームに入らない、あるいは1年でも遅く入居する努力はしていますか?それは健康で人とのほど良い接点を持ち続け、張り合いがあるライフを送ること、実はこれが最大のお金の節約方法だと思っています。

美酒美食、暴飲暴食を続けていれば不健康になります。それらは自制心の問題でまず自分をコントロールすることが結果としての1億円への近道ではないでしょうか?

次に投資ですが、株にしろ為替にしろ、普通の人が普通にやっているだけではまず儲かりません。ビギナーズラックで初めの数回儲かって調子に乗るとその倍返し、10倍返しが待っています。北米でカジノで遊ぶ場合でも初めの30分で大儲けして調子に乗っているとあっという間にすっからかんになるのと同じです。

つまり、小手先のサイドジョブは宝くじを買うようなものだという割り切りが必要でしょう。それよりも自分のプロフェッショナルな領域をもっと磨き上げ、独立できるぐらいの勉強をしたほうが良いと思います。それこそ週末起業ぐらいの感じの方が着実なメリットを享受できると思います。これは老後も専門を生かしたちょっとしたアルバイトが可能になるとも言えます。

次に持てる資産の活用があると思います。例えば私は商店街のシャッター街の店舗を活用したらよいと思います。「腐っても鯛」といいますが、商店街に面した不動産は一階にあり潜在価値は非常に高いのです。住居の一部だから、と思っている方、ちょっとした設計で切り離して賃貸にだすことが可能な場合は多いものです。

住宅街の人でも例えば昔取った杵柄で自宅で教室を開くこともできます。それこそ今の若い人は作法を知らないのですからお茶やお花、更には料理に掃除の仕方まで「教室」として教えてみたらどうでしょう?結構いけるはずです。

しかし、こう提案しても必ず反発があります。「人を家に入れるのはおっくうで」「後で文句を言われたら嫌でしょ」。才能を活用しないのはもったいないと思います。何もプロフェッショナルでトップを目指す教室を運営するわけではないのです。右も左も知らない人には初歩が重要です。あるいは一緒に同じものを学ぶ仲間感覚が楽しいという時代です。

こう考えると老後に1億円というよくわからない目標を設定されてうろたえるより80歳になっても張り切って生きています、という方がよっぽど健康的ではないでしょうか?1億円は貯めるものではなくてついてくるもの、こう考えた方がすっきりする気がいたします。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 8月28日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。