このニュースをどう読むかは人によって様々だろう。当分のあいだ、油価は上がらない。 ”ニューノーマル” に入ったのだ、と見る人もいるだろう。
いや、スタットオイル(ノルウエーの国営石油会社)がスマートな会社で、数年後には高収益の会社になる証だ、と見る人もいるだろう。現在の低油価が大手石油会社の資本投資を減少させているため、数年後には需給は逼迫し、油価はふたたび上昇するから、その時に低コストの石油生産をエンジョイできるのだ、と。
読者の皆さんはどう思われますか?
件の記事とは、FT “Statoil makes flagship project profitable at $25 a barrel” (around 2:40 on 30/Aug/2016 Tokyo time)というものだ。
筆者の興味にしたがって内容を紹介すると次のとおりだ。
・スタバンガーで開催された業界コンフェランスで、スタットオイルの社長 Eldar Saetreが語ったもの。
・第一次開発期間におけるコストを2割削減し、990億クローネ(約120億ドル)にできる。
・対象鉱区は、この30年間で最大の発見で、ノルウエー領北海のJohan Sverdrup Discoveryと呼ばれているもの。
・当該鉱区では最大30億(石油換算)バレルの埋蔵量が期待され、ピークにはノルウエー全体の石油ガス生産量の25%を占める。50年間生産ができ、国に1兆3,500億クローネの収入をもたらす。
・スタットオイルを含む多くの石油会社が、ノルウエー領北極海こそ次の「フロンティア」であって欲しいと願っているが、現在の50ドル価格では利益がでない、と見られている。
・だがJohan Sverdrup鉱区は別格で、(開発が困難なところも含めた)全地域の開発にかかるコストも、これまでの1,700~2,200億クローネ(約206~267億ドル)見込みから1,400~1,700億クローネ(約169~206億ドル)に減少できるので、30ドルで利益が出る見込み。生産量も2022年には55~65万B/Dとなる見通し。
・なおスタットオイルがオペレータで40%権益を保有、他にはスエーデンのLundin Petroleum (22.6%)などがいる。
この記事にもあるように、過去2年間の低油価が資機材・サービス価格の低下を招いているのは事実で、もし油価が上昇すれば、これらの価格も上昇するのは間違いがない。だが、50ドル市況のときに25~30ドルで開発できるのであれば、70ドル市況になっても35~45ドルでは開発できるだろう。
デマンド・ピークが予想外に早くきても、スタットオイルは大丈夫だろうな。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年8月30日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。