東京で暮らす密入国外国人を守る警察組織ディアスポリス。久保塚早紀は、そんな異邦警察の裏都庁の警察組織で働くただ一人のケーサツで国籍不詳の謎の男。ある時、裏都民のマリアが誘拐・監禁される事件が発生し、久保塚が監禁先を見つけ駆けつけるが、その時マリアはすでに命を絶たれていた。犯人は、アジア人犯罪組織「ダーティイエローボーイズ」の周と林。久保塚は、ヤクザの若頭・伊佐久から情報を得て相棒の鈴木と共に、逃走した二人を追うが、そこには二人の情報を握っている地下教会の存在があった…。
風俗嬢のマリアを殺害して逃げた中国人・周と林は、アジア人犯罪組織「ダーティイエローボーイズ」の一員だが、彼らに計画性や秩序だった考えはまったくない。「撃っちまえ」と短絡的に叫ぶ周は、とりわけ暴力や死に憑りつかれているとしか言いようがないクレージーな青年だ。彼らは母国の中国で禁じられた宗教を信じたというだけで、迫害された過去がある。世間や国家、権力への恨みが、無軌道な犯罪に走らせているのだろう。
だが全国にある犯罪組織の「ダーティイエローボーイズ」の支部を次々に襲撃しながら、これまた全国にある地下教会で次々に懺悔しては殺戮を繰り返す周と林の“道行”は、刹那的で死を予感させ、異様な迫力を醸し出している。幼い頃に受けた理不尽な暴力と差別に、何も信じられなくなった周の、濁った片目が印象的だった。この周を演じるのが、可愛らしい笑顔が魅力の子役出身の須賀健太。こんなぶっ飛んだ役もやれるとは。この俳優、案外面白い役者になるかもしれない。
【60点】
(原題「ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-」)
(日本/熊切和嘉監督/松田翔太、浜野謙太、須賀健太、他)
(バイオレンス度:★★★★☆)
編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。