メルケル独首相に赤信号が灯った!

長谷川 良

投票結果は予想された範囲だったが、その衝撃は小さくない。ドイツ北東部の旧東独の州メクレンブルク・フォアポンメルン州で4日投開票された州議会選挙の結果、メルケル独首相が率いる「キリスト教民主同盟」(CDU)が、創設3年しか経過していない新党「ドイツのための選択肢」(AfD)に抜かれ、第3党に後退した。

▲赤信号が灯ったメルケル首相(独与党「キリスト教民主同盟」CDUの公式サイトから)

その主因はメルケル首相の「難民ウエルカム政策」に対する批判票が右派系のAfDに流れ、CDUの票を奪っていったからだ。ちなみに「左翼党」は13・2%で第4党となったが、「緑の党」、「自由民主党」(FPD)、極右派政党「ドイツ国家民主党」(NPD)の3党は州議会入りを果たせなかった。

メルケル政権の与党パートナー「社会民主党」(SPD)は2011年の前回選挙の得票率35・6%から30・6%と5%急減したが、第一党をキープ、第2党のCDUは23%から19%とこれまた4%の得票率を失った。それに代わって、AfDが州議会選初登場でいきなり20・8%を獲得し、CDUを抜いて第2党に躍進した。
同州では連邦政治と同じで、SPDとCDUの連立政権を組んでいる。それには変化はないが、CDUの第3党への後退は同党の低迷というより、メルケル首相の政治的後退の印象が強い。

人口約170万人の小州(州都シュヴェリーン)の議会選は本来、メディアの関心を引く選挙ではなく、ベルリンの連邦政治に影響を与えるものでもなかったが、今回は事情が異なっていた。メディアは大きな関心を示し、結果を報じた。理由は同州選挙がメルケル首相の政治生命を占う選挙となるからだ。選挙前からメルケル首相の支持率の後退が報じられてきた。同州選挙結果はそれを裏付けたわけだ。

独週刊誌「シュピーゲル」電子版は5日、「メクレンブルク・フォアポンメルン州はメルケル首相自身の連邦議会選の選挙区だ。すなわち、AfDは今回、首相の居間に土足で入ってきて暴れたわけだ」と表現している。

AfDは選挙戦では一つのテーマに絞って戦った。「メルケル反対」「メルケル首相の難民政策反対」だ。興味深い点は、同州の難民、移民の数は他州と比べて少ない。難民との衝突といった南部バイエルン州で見られるような現象はない。にもかかわらず、難民政策が選挙戦の行方を大きく左右したのだ。すなわち、AfDは難民殺到という国民の恐怖感を煽って、メルケル首相への批判票を獲得していったわけである。

メルケル首相は早急に対策を講じなければ、低迷傾向に歯止めを掛けられなくなるかもしれない。一つには、国民に懸念を与えている「難民ウエルカム政策」の修正を表明しなければならない。具体的には、これまで拒否してきた「難民受け入れの最上限」を表明することだ。同時に、メルケル首相の難民政策で揺れているCDU内の結束を回復する一方、姉妹党、バイエルン州の「キリスト教社会同盟」(CSU)との連携を強化しなければならない。
いずれにしても、メルケル首相にとって連邦議会選挙前までに取り組まなければならない課題は少なくない。メクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙結果は、メルケル首相の政治に赤信号が灯ったことを示している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。