「知っている」と「やっている」の間にある大きな差

自動車免許を持っている人ならわかると思いますが、教習所の敷地で教官に教えられながら車の運転をするのと、免許を取って自分の車で公道を走るのには、雲泥の差があります。

それと同じように資産運用でも、本を読んで知識を持っている人と、実際に自分のお金を使って運用をやってみた人の間には大きな違いがあるのです。

例えば、金融商品を使った資産運用では、はじめるにあたってまずネット証券に口座開設しなければなりません。恐らく、2~3割の人は口座開設する時に書類の不備で戻ってきてしまうと思います。口座を開けるという単純なことだけでも、実際にやってみると色々ハードルがあることがわかります。

口座開設が終わると、次は入金です。前受金を振り込まないと取引できません。これも意味が分からないという人が意外に多いのです。ようやく入金が終 わって買付できるようになっても、ログインできない人もいます。また投資信託なら目論見書を閲覧したり、ネット上で色々な手続をしないと購入できません。 どの商品を購入すれば良いかも、数百本の投資信託が並んでいるとわからなくなってしまいます。さらにNISAやら、特定口座やら、頭が混乱するような面倒 な仕組みがたくさんあります。

「ネット証券に口座開設して、投資信託で積立を始める」と言うのは簡単ですが、実際に毎月の自動積立をセットできるようになるまでには、かなりの時間と労力がかかります。途中で挫折する人もきっとたくさんいるはずです。

これが、一棟ものの不動産投資になると、さらに複雑になります。まず、取引のマニュアルのようなものはありません。会社によって、あるいは物件によって取引の方法が変わってきます。手探りで自分でやり方を見つけなければならないのです。

ローンの借入も、まずどの金融機関がどんな融資姿勢なのかわかりません。手探りで色々な金融機関とコンタクトすることになります。支店や担当者によってもまた対応が変わってきますし、先月と今月で審査基準が急に変わったりします。

資産運用の相談は、自分のお金で実際に取引した経験のある人にするべきだと私は思います。取引したことも無いのに「不動産は危険」とか「FXはやってはいけない」と言い切る「資産運用のプロ」がいますが、車の運転したこと無いのに運転は危険だと言っているのと同じで説得力はありません。

だから、私は対岸の安全な場所から一般論を語り、失敗した時だけ大騒ぎする人ではなく、同じ船に乗って一緒にリスクを取る人たちとお付き合いするようにしているのです。

(写真の気仙沼のサンマも、現地に行って食べた人にしか本当の美味しさはわかりません)

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。