【映画評】真田十勇士

渡 まち子

関が原の戦いから約10年、徳川家康は天下統一を目前にしていた。徳川方と、豊臣秀吉の遺児・秀頼と母である淀殿を中心にした豊臣家との対立が深まっていた頃、大阪城には、豊臣方の武将が続々と集結していた。その中心的人物は天下の武将として名をはせる真田幸村と彼が率いる真田十勇士。だが実は幸村は、男前な容貌と、奇跡的な幸運で武功をあげ、周囲から誤解されていただけの平凡な武将だったのだ。そんな時、世の中を面白くしようと抜け忍になった猿飛佐助が、幸村を本当の猛将へと仕立てあげようと提案する。佐助は同じく抜け忍の霧隠才蔵ら10人の仲間を集め、真田十勇士を結成し、大坂冬の陣・夏の陣に挑んでいく…。

2014年に上演され、ヒットを記録した舞台を映画化した痛快時代劇「真田十勇士」。アニメ化もされたというだけあって、映画冒頭の登場人物紹介のパートはすべてアニメーションによって表現されている。歴史を「もし…だったら」と仮定した映画はたくさんあって、どれも、時にコミカル、時にシリアス、現代を照射するストーリーが持ち味だが、この作品もまたしかり。何しろNHKの大河ドラマでも話題の真田幸村を、腰抜けの凡人に描くのだから、かなりの改変である。

猿飛佐助のモットーは、面白く生きること。何でもありの彼の周辺では、いったい何が本当で何が嘘なのかわからなくなるほど、突拍子もない出来事が起こる。佐助の強烈な磁場は周囲に広がり、ついに真田幸村その人さえも激変させていくという展開だ。舞台らしさを残したセリフと、いい意味での節操の無い演出は、いかにも、あらゆるジャンルの映画作品を手掛ける堤幸彦監督らしい。主要キャストである猿飛佐助の中村勘九郎と霧隠才蔵の松坂桃李は舞台版に引き続きの出演。ノリで突っ走るような物語だが、冒頭のアニメと共に、エンドクレジットで登場する、真田十勇士たちのその後のワールドワイドな活躍に胸が躍った。ハチャメチャながら、ところどころで歴史に符合するのが楽しい。
【65点】
(原題「真田十勇士」)
(日本/堤幸彦監督/中村勘九郎、松坂桃李、大島優子、他)
(ノリの良さ度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月22日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式サイトより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。