管理職になれない人に確実に足りない○○とはなにか?

尾藤 克之

※現職のため顔出しはNG。イラストは中尾作。

毎年6月から7月に発表される新入社員を対象とした「働くことの意識調査」(公益財団法人日本生産性本部)によれば、「どのポストまで昇進したいか」という問いに対して、「役職に付きたくない+どうでもよい」は29.6%とおよそ3割であり、増加傾向にある。

その現状に対し「向上心がない」「責任を取りたがらない」と揶揄される風潮にあるが、実際に管理職になるというのは狭き門であるのが実態だ。「平成27年度賃金基本統計調査」(厚生労働省)によれば、企業内における部長職の割合は3.4%、課長職の割合は8.0%であり、88.6%は非管理職である。

3割の若者が管理職になりたくないというということは、見方を変えれば、7割は何らかの役職につきたいと考えているともいえる。しかし前述のとおり管理職になりたくてもなれないというのが実態だ。

今回は、ビジネスパーソンでありながら、ベストセラー作家でもあり企業向けの研修講師などをつとめる、中尾ゆうすけ氏(以下、中尾)に話を聞いた。

■現在の管理職昇進の実態とは

-上に行く人(管理職になる人)とここまでの人(管理職になれない人)の違いは?

「単純に考えて、上に行く人の条件を満たすか、満たさないかということです。年功序列制度ではない一般的な企業では、管理職へ昇進するためには、大きく2つの条件があります。まずは『職務遂行能力が高いこと』です。これは、知識や経験、そして何よりも実績があることによって判断されます。」(中尾)

「もうひとつは、上に行ったときにその役割を担うことができるかどうか、つまり必要な『マネジメント力が備わっていること』です。もちろんこれに加えて、語学力や、昇進試験、論文試験など企業によって必要なさまざまなハードルがあります。」(同)

-それでは、まず「職務遂行能力」を上げるにはどうすればよいのでしょうか?

「社員の能力開発や適材適所の配置の考え方において一般的には「強みを伸ばす」ということが言われています。しかし、私はむしろ『弱みを克服して伸ばせ』ということを勧めています。強みを伸ばすことは、短期的な成果を求める上では非常に有効ですが、長期的な人の成長という視点で考えたときにやや疑問です。」(中尾)

-日本においてはスペシャリストよりもゼネラリストであることが求められる。強みを伸ばそうと適材適所の配置を考えても、人員の計画と、人員の能力が一致するとは限らず、強みを伸ばそうにも、それを生かせる場がないことも想定される。

「配属先は自分の意思だけで決めることはほぼ不可能であることを考えれば、今の部署で活躍するために必要な能力、それが弱みであるのなら、その弱みを克服しさらに伸ばしていくことが、実績を上げる近道なのです。」(中尾)

これは日本企業における実態を照射しているともいえる。強みにはそれほど伸びしろはないが、弱みには伸びしろがあるので、同じ努力をするならば、弱みを克服して伸ばすほうがより成果が高まるということだ。

■強みを伸ばすより弱みを克服せよ

-それによって上司の評価も上がるということでしょうか?

「そうです。強みというのは、非常に判断しづらいです。対照的に、欠点は比較的わかりやすいです。『できる』の基準はまちまちで、本人ができていると思っても、評価者は満足しないことが多いのですが、『できない』ことは誰の目にもはっきりとわかります。」(中尾)

-たしかに、「あいつは○○ができない」というように、できない部分に焦点が当たってしまうことが多い。この点からも、人の評価はネガティブな面にいきやすいともいえよう。

「たとえ環境が整っていたとしても、『強みを伸ばす』ことは成長の基本であり、誰でもやることです。それだけでは周りと差をつけることはできません。そういうわけで、上に行くことを考えたときには、強みはキープしつつも、弱みも一通り克服しておくことが望ましいです。評価する上司も人間ですから、そうした心理が働くということも理解しておいたほうが良いでしょう。」(中尾)

-また、中尾は自分の弱みを把握する5つのポイント次のように提示している。

1.今の仕事の中で苦手なことは何か
2.自分の知識や能力だけでは困難なことは何か
3.上司の支援のおかげでできている仕事は何か
4.部下や同僚が担当していることで、自分が担当したことのない仕事は何か
5.将来活躍したい分野があれば、それに必要な能力や経験で自分にないものは何か

弱みとは「課題」であり、それをしっかりと認識しなければ、いつもでも克服することはできない。まずは自分の日常業務を中心にチェックしていくことが望ましいだろう。

上に行く人が早くから徹底している仕事の習慣』(すばる舎)

尾藤克之
コラムニスト

PS

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