「変革」や「革新」を推進するには明確な理由が必要になる

写真は本人(上場企業の人事責任者であるため写真非公開)

「このままでは会社が回らなくなる!」「業界のスピードについていけない」といったときに、会社では「変革」や「革新」といった言葉が使われるようになる。従来の延長線上にあるような方法では通用しない場合、抜本的な見直しが求められるためである。

しかし、今まで会社が培ってきたものを無視して、何もかもそっくり変えてしまえばいいというのは短絡的な考え方ともいえる。「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」をハッキリさせておかなければいけない。

今回は、ビジネスパーソンでありながら、ベストセラー作家でもあり企業向けの研修講師などをつとめる、中尾ゆうすけ氏(以下、中尾)に話を聞いた。

■変えてはならないものを決める

–中尾が業務改善に取り組んでいる時、知人のコンサルタントから次のアドバイスがあったそうだ。「変革や革新は、変えてはならないものを決めることです。理念やポリシーなど大切にしていることがあれば明確にしてください。きちんと部下に説明しなければ、部下は動けないんです。それができないから、号令だけで終わってしまうのです。」

「これは、私にとって、とてもわかりやすいアドバイスでした。というのも、私が以前コンピューターの製品開発にかかわっていたときに、『60万円の原価の製品を30万円にする』という開発方針が上層部から下りてきたことがあったからです。」(中尾)

–はじめは誰もがムリだと思ったが、次のように解釈するようにつとめたそうだ。原価を半分にするためには、一人ひとりが受け持ちの部分を半分の金額でつくることを目標にする。大きさは機能に影響しなければ機能自体も削減して構わないと。

「変えてはならないこと(機能の高さ)、変えてもよいこと(形状)を明確に示した結果、さまざまなアイデアが出ました。それまで使ったことのない材質の検討や、経験のなかった海外生産、これまでにない斬新なデザインによる部品点数削減やそれに伴う材料費の削減。そして、機能や品質を落とさず、見事に原価を半分にし、成功したのです。」(中尾)

–この考え方は、改革時に限らず、普段の仕事にも応用していくことができる。会社の理念や、組織の方針、仕事の目的やポリシーが変わることはまずない。このような、基本的な部分は守り、状況に応じて打ち手を考えれば良いのである。

■理由を説明することの重要性

–本来、上層部の人間は、全体が見えている人でなければいけない。会社や組織として何が大事で何がそれに付随することなのかを理解することである。

「階層が上がって指示を出す立場になると、部下や後輩から『今回の指示は、この間言っていたことと全然違いますよね?どうなっているんですか』などと言われることもあるかもしれません。そういうときにも、『なぜ変えるのか』『なぜ変えてもよいのか』という意図を明確に説明することで、相手の不信感を払拭できます。」(中尾)

–やり方や目標値を変更する場合には、変えてもよいものとして、変える理由を伝えなければいけない。理由が不明瞭であれば「根本的なことがわかっていない」と思われて信頼をなくしかねないので注意が必要だろう。あなたの会社はどうだろうか。

参考書籍
上に行く人が早くから徹底している仕事の習慣』(すばる舎)

尾藤克之
コラムニスト

PS

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