二重国籍で最大のリスクは徴兵・徴用の可能性

八幡 和郎

イスラエルでは女性にも兵役がある(Wikipediaより:編集部)

二重国籍でいちばん困るのは戦争に関する問題だ。日本ではあいまいになっているが、普通の国では戦争になれば軍隊に召集されたり女性も含めて徴用されるのである(現在の日本の法律では災害の場合には徴用される可能性があるが、外国が攻めてきた場合は、兵站を手伝う義務もなく、そんな国は珍しい)。

そのとき、日本以外の国籍を持っていたら、その国の国民としての義務を果たさねばならないが覚悟はあるのか。日本にいる分には大丈夫かもしれないが、海外に旅行したり、とくに、もうひとつの国籍を持つ国に滞在しているときには、いきなり兵営行きになっても基本的には文句言えない。

世界の徴兵制導入状況(WIkiperidaより:編集部)

また、戦争にならなくとも、義務兵役がある国では原則、それを履行しなければならない。ヨーロッパ諸国では、近年、義務兵役が停止されているが、それ以前は、向こうで生まれて国籍取得の権利があっても、女子は22歳まで重国籍にしたり、その後も、法的義務に反して選択をしなかったり、離脱せずにそのままにしている人も多かったが、男子の場合はだいたい抜いている。

現在、兵役が廃止されていても、最近はスウェーデンが復活させ、ドイツやフランスでも有力な兵役復活や女性も含めてそれに代わる何ヶ月かの訓練を創設する議論があるなど安心できない。

ヨーロッパなどでは、二重国籍でもっとも問題になるのは、どの国で国防義務を負うのか、兵役を重複して行うべきかどうかといったことだった。

逆にいえば、兵役を果たした国が主たる忠誠の対象という見方がされる。だからこそ、10歳のころフランスにスペインから移住したフランスのエマニュエル・バルス首相は、20歳のときに帰化してフランスで兵役に就いたことで、フランスの政治家たり得ているのである。

逆にいうと、兵役を廃止すると、国民意識が維持できない、どこの国民として扱って良いか分からないという深刻な問題が出て、それがテロ対策でも憂慮されていて、それが復活議論にも繋がっている。

基本的には重国籍の問題ではないが、日本では在日韓国人の人々の兵役とか第二次朝鮮戦争勃発時の扱いは、潜在的には大問題である。

いくつも国籍をもっていたらラッキーというものではない。