トランプ氏と長谷川豊アナ、炎上術の3つの違い

渡辺 龍太

最近、フリーアナウンサーの長谷川豊さんが、8本あったテレビのレギュラーを急に全て失う事となってしまいました。その原因となったのが、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」という過激なタイトルのブログの炎上です。

 

長谷川さんは、今までにも読者の感情を煽る事で注目を集めるブログを書き、PVを上げる事を得意としていました。ですが、今回は大きなミスを3つ犯しているように見えました。なので、今回は長谷川さんの記事と、人々の感情をあおる発言を繰り返す手法で注目を集め、結果的にアメリカで大統領の一歩手前まで上り詰めている、ドナルド・トランプ氏との感情の煽り方の違いを比較してみます。そして、それにより、長谷川さんが炎上を乗り切れなかった原因を追ってみたいと思います。

 

まず、長谷川さんは、『日本の医療費が危機的に高くなっている』という記事を普通に書いたのでは読む人が限られるので、多くの人に読んでもらうために『殺せ』という強い表現を使ったのでしょう。一方、トランプ氏は、例えば『アメリカ人に対するテロの脅威が高まっている』と普通に主張したのでは、他候補の中に埋没してしまうので『イスラム教徒は入国禁止』という過激な表現を使ったはずです。

 

この二人の発言の違いはと言うと、まず第一に『問題に対する危機感』と『言葉の強さ』の釣り合いが全く違います。一部のアメリカ人には、『イスラム教徒入国禁止』という言葉と釣り合いが取れるほど、テロに対する恐怖感があります。ですが、多くの日本人は、(持つべきなのでしょうが)医療費が増えている事に対して、長谷川さんの『殺せ!』という言葉に釣り合いが取れると思うほどの危機感は持っていないと思います。

 

第二の違いは、過激発言が現状のルールの範囲内かどうかという点です。長谷川さんの『殺せ』という表現は、やはり、憲法で国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障されている事を考えると、現状のルールからは外れています。一方、『イスラム教徒の入国禁止』は、法律違反ではないんです。時々、日本人だって入国審査に引っかかってアメリカに入国できない人がいるように、誰を入国させないかは、アメリカが決めて良い事なんです。

(※トランプ氏の主張は、全部ではありませんが、見かけによらず、厳密には法律違反ではなかったりする事が割とあります。)

 

第三は、開き直り方の違いです。長谷川さんも、トランプ氏も、過激発言が炎上した時に、共に持論を貫き通しました。長谷川さんは、次の様に、今回の炎上騒動の黒幕を攻撃するという形で開き直りました。

『ベッキーちゃんの時と同じですね。テレビ上に出ている人間を引きづり降ろすまでがゲームの人たちです』

一方、トランプ氏は、なぜ自分が『イスラム教徒は入国禁止』と言ったのかというを、この様に大義名分を強調しながら開き直りました。

『ジハード(聖戦)のみを信じて、理性を失い、人間の生命を尊重しないような人々による残虐な攻撃に対して、米国を犠牲にすることはできない』

こうやって比べてみると、トランプ氏の過激発言は『弱者の為に立ち上がっている』という担保が、ハッキリ強調されています。しかし、長谷川さんは、完全に自分の為に開き直った感じになってしまいました。だから、長谷川さんが表舞台から消え、トランプ氏は表舞台にまだ生き残っているのです。

(※選挙だからというわけでなく、昔から、トランプ氏の過激発言は弱者のために立ち上がっているというパターンは多いです。)

(※2人の手法の違いを書いているだけで、こういった手法を推奨しているわけではありません。)

 

さて、長谷川さんとは直接お会いした事は無いのですが、以前、私の書著の帯を書いていただいた事があったのでメールのやり取りをした事があります。しかも、その本は、こんかいのブログの炎上のような『感情をあおればニュースは売れる』という事を斬る内容だったので、長谷川さんにも少しだけ、メールで情報発信のあり方についての意見を伺いました。

 

その時にやり取りからの印象では、私の様な格下の放送作家にも丁寧に対応してくださり、とても礼儀があって良い人という印象で感謝しています。また、長谷川さんのブログが炎上した後に、長谷川さんとトラブルを抱えていたという人工透析患者のだいちゃんという方が、1対1で直接話をしてきたそうです。そのブログの最後に、長谷川さんと話してきた印象について、こう書かれています。

 

やっぱりアナウンサーであり、ライターではないので文章の書き方に問題があっただけで、私が話した感じでは偏った思想を持った人、とかそういう感じではありませんでした。

文章の書き方がまずかったんだね。

この方の本職はアナウンサーなのでこの人は喋ったほうが物事をしっかりと伝えることが出来るな、と思いました。

 

この様に、長谷川さんの文章は読者集めに必死でキツイ部分はありましたが、人柄は良いので、当事者とは比較的早く和解するんじゃないかと勝手に予想しています。そして、その上で、過激すぎる読者集めから足を洗い、またメディアでお目にかかれればと、お世話になった者として祈っています。いずれにせよ、私も、時々、過激な情報の見せ方をする事もあるので、今回の騒動は、大変勉強になりました。

 

 

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※このブログの著者プロフィール

渡辺龍太 放送作家(会話と文章の専門家)

ブログ:http://kaiwaup.com

Twitter: https://twitter.com/wr_ryota

著書:『朝日新聞もう一つの読み方』(日新報道)
紹介ブログ:朝日新聞の押し紙問題!武田邦彦教授の解説が痛快すぎる

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