なぜ、アメリカのメディアはトランプが嫌いなのか?

田原 総一朗

アメリカ大統領選の行方から目が離せない。共和党候補のドナルド・トランプは、はじめは泡沫候補と見られていた。ところが「ニューヨーク・タイムズ」紙が、彼の数々の「暴言」を取り上げたことなどをきっかけに、急速に注目されるようになる。

「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべき」「メキシコとの国境に壁を築き、その費用をメキシコ側に出させる」などなど、彼のとんでもない発言は、現状に不満を抱く一部の国民にとっては、一種、快感を覚えるものだったようだ。物議を醸しながらもトランプの人気は上昇し、ついに共和党候補に選出されてしまった。

現地時間10月19日、トランプは、民主党候補ヒラリー・クリントンとの3回目の討論に臨んだ。ところが、「ワシントン・ポスト」紙が、11年前の女性蔑視発言を報道した。これが、そうとうヒワいな、致命的とも言える、ひどい内容だったようだ。トランプは、「これはロッカールームの話」と弁明した。だが、たとえ「ロッカールームの話」でも報道するのが、アメリカメディアだ。ここが日米の違いだなと感じた。

いずれにしても、この報道が多くの国民の怒りを買い、トランプの支持率は低下した。共和党のライアン下院議長は、トランプの選挙運動をしないとまで発言している。党内も分裂してしまっているのだ。

「トランプ現象」の背景には、現状維持を好むメディアの習性があると僕は思う。トランプは、日本や韓国から軍隊を引き上げる、などと発言している。つまり、アメリカは「世界の警察」を辞め、自国のことを第一にという、「アメリカ・ファースト」にしようというのだ。この大転換に対して、アメリカメディアは拒絶反応を示している、と僕は思うのだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年10月31日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。