豊洲市場って、そもそも必要なの? --- 東 登志文 

築地市場を視察する小池都知事(編集部引用)

築地を昭和初期のレトロな冷蔵庫にしていたのは誰なのか。

築地の仲卸業者45.76経常赤字、債務超過は50.85%だという。

豊洲移転に際して、体力に乏しい仲卸業者の保証や対策が不十分という話であるが、それは果たして豊洲市場の示す本質的な問題であろうか。

築地市場の取扱量は、2000年の60万トン強から、45万トンを割るまでに減少し、これはまさしく近年の肉ブーム化と、それに伴う日本人の「魚離れ」である。

この需要の減少こそが、築地衰退の一番大きな真の理由ではないだろうか。

そのうえで需要の減衰に対し、東京都が大きな公費をかけて公設市場を新たに開設、維持し続けることは、果たして妥当かどうかの方が、今論議すべき、重大な課題と思う。

まず、流通の問題である。

新市場の目玉という配送にいたるまでの一定の温度管理は、やって当然の事なので、決して目新しいものではない。そもそも形状が示す通り、鉄道主体の運輸体系で始まった築地が、現在のトラック主体の運輸へと対応するのが極度に遅れた結果ではなかろうか。

そしてその遅れた対応自体、既に今起こっている流通革命に、後れを取っており、

現状の築地のナカを見てもそれが十分に伺える状況である。

大多数の人々の創造する築地のイメージである活気のある“セリ”であるが、いまや、マグロ、ウニ、活場のみで行われるにとどまり、ほとんどが現地から取引する大卸と、小売りと取引する仲卸とで直接取引の行われる、相対取引にシフトしている。

それは、昭和の取引が主にアジ、サバなどの近海大衆魚と呼ばれるものが求められたのに対し、現在は高級魚や大半がサーモンなどの輸入物等に人々の嗜好が変わったことをよく示している。

この変化に対し、本来市場流通としての最適化は、EOS(企業間の電子取引)の整備や、需要のマーケティング、ブランド魚の供給という面で当然なされるべきであると思うが、現実は自らが得意とする、良いサカナを選ぶ、という方向性が強く表れ、セリ場の縮小につながっているのではないだろうか。

そして、市場の外にもう一つの問題がある。

アメリカ国内やロンドンでは、すでにAmazon Freshの流通が始まっている。

生鮮の宅配流通はすでに世界では実現され、日本ではスーパーを中心に展開している。市場から小売り、顧客への面で、新しい流通が始まっているといえるが、果たして、新しい豊洲市場は対応できているのであろうか。

これも見逃せないポイントだ。

こうした市場の現状を踏まえ、「民間に委託するべき」という意見が出ているのも頷ける。

幸いにして、東京は世界に進んで都市集中が激しく、逆に配送効率という面では有利に働く状況である。

民間に委託した方が、結果的に社会に適応した市場が形成されるのではないだろうか、と私は思う。

観光も含めた千客万来型の大型施設が、かつての各地のレジャー施設のように負の遺産化しないためにも、宅配に対応したBtoC流通センターと、ネット対応のBtoB流通システム両方を整備するような形が、もっとも望ましいのではないのだろうか。

ここから改めて考えていただきたい。

そもそも築地市場が時代遅れになったのは、行政が市場を取り仕切る事自体にこれらの問題の根源があるのではないか。

そして、現在の豊洲市場もまた、行政が取り仕切ることが、安全や施工の諸問題や利権の疑惑を発生させているのではないか。

先項にて述べたように、もともと鉄道運輸をベースに考えられたからこそ、市場形状は扇型であり、温度管理の設備どころか、乗客車両の空調すらない時代に比例した開放型の設備につながったわけであり、本来民間であれば、国内の配送が、交通網の整備と共にトラックなどの陸運にシフトした時点で、その形状も変えて行くことが合理的と判断して実行したはずだ。

近年まで、多大な都の経費をかけて補修を続けていたことはその視点から言えば、まことに非合理的な判断として言わざるを得ないであろう。

そして今回もまた、予定よりはるかに多くの経費を積み上げてしまう構造と、未来への先見の明のなさこそ、この行政主体の運営という事の、合いも変わらない時代遅れの結果だとするなら、小池知事のこの掘り下げの顛末の着地点は民間委託にこそ、ふさわしいのではないだろうか。

今後安全基準の判断ができたのであるならば、運営主体の議論がされることが望ましいと思われるのだ。

 

東 登志文 会社員/アゴラ出版道場一期生

プロフィール
1968年 大阪生まれ 国立和歌山大学中退
地元の書店、書店併設の大手飲食チェーンを経て2003年より、宅配大手チェーン店長として地域ビジネスにかかわる。


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