【映画評】コウノトリ大作戦

渡 まち子

一人っ子のネイトは、一緒に忍者ごっこをして遊ぼうと、まだ見ぬ弟を心待ちにしていた。ある日ボロボロになった“赤ちゃん申込書”をみつけたネイトは、早速申し込む。届いたのは、コウノトリ宅配会社。しかし売上重視になっていた会社は、すでに「赤ちゃんのお届け」を禁止していた。だが手違いで可愛らしい赤ちゃんが誕生してしまう。会社のナンバーワン配達員でお人よしのジュニアは、社長に内緒で赤ちゃんをお届けしようと決意。ちょっぴり天然の女の子チューリップを相棒に、さまざまなトラブルに巻き込まれながら「赤ちゃんお届け大作戦」の冒険に旅立つ…。

コウノトリが赤ちゃんを運んでくるという民間伝承を現代風にアレンジしたアニメーション「コウノトリ大作戦」。今どき、小学生でも「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」などとは誰も信じちゃいないだろうが、本作では、コウノトリが宅配会社を営んでいて、しかも業績重視、売上至上主義から、赤ちゃんのお届けはとっくの昔に廃止しているという、世知辛い設定が笑える。伝統の危機はこんなところにも…と思ってしまうが、赤ちゃんが可愛すぎて…という理由なのが微笑ましい。お人よしのジュニアは、社長命令に反して大冒険を繰り広げるが、その相棒となる女の子チューリップのキャラがいまひとつ魅力が薄いのが残念。天然で想像力豊か、怖いもの知らずというのはいいが、動物たちの世界で浮きまくっている。チューリップにはある秘密があるのだが、ジュニアの相棒は、やはり動物(鳥)であるべきでは。むしろ、告げ口屋のハトや、赤ちゃん好きのオオカミ軍団の方が、よほどキャラが立っていて、魅力的だ。

テーマはテッパンともいえる家族の絆。ブラックな設定やシニカルなセリフもある本作、ファミリー映画ではあるが、お子様より大人たちの方が楽しめるかもしれない。まるでFedEx(フェデックス)並の巨大企業のコウノトリ宅配会社は、ラスト、幸福感いっぱいの赤ちゃんたちであふれかえる。少子化への警鐘か?いやいや、コ難しいことは考えずに、素直にこの大冒険を楽しもう。
【55点】
(原題「STORKS」)
(アメリカ/ニコラス・ストーラー、ダグ・スウィートランド監督/(声)アンディ・サムバーグ、ケルシー・グラマー、ケイティ・クラウン、他)
(ギャグ度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。