科学は時に「不愉快な真実」を映し出します。
約2年前に話題になった経済学者T.ピケティの方程式「r>g」もその一つです。
お忘れの方のために5秒でリマインドしましょう。
資本収益率:働かなくても資本家に入ってくる収益の伸び率を「r」、
経済成長率:労働者が働いてもらえるお金の伸び率を「g」、
「r>g」とは、「資本家はどんどん金持ちになり、労働者はどんどん貧しくなる」という方程式です。
みんな薄々と勘付いていたことではありますが、この方程式を「実証してしまった」のがT.ピケティでした。
資本家にとっては自分たちに富が集中するカラクリを作ってきたことがバレてしまいました。労働者にとっては自分たちの貧困化が加速する現実を突きつけられました。ピケティによって誰にとっても極めて不愉快な真実が晒されてしまったのです。
不愉快なことに対しては、当然のことながら打開策を求めるもの。経済学者としてのピケティの回答は「戦争」「革命」「資産家への大増税」の3つでした。
しかし、2016年11月10日、私たちは予想外の答えを突きつけられたのかもしれません。それは、D.トランプ大統領という回答です。「え、トランプも“r”サイドの人間じゃないか!」と思われることでしょう。確かに“r”サイドの人間です。しかし、大事なポイントは自身が“r”サイドかどうかではなく、保護主義的な経済政策、すなわち経済のローカル化です。
ピケティの「r>g」の「>」をさらに拡大したのは「グローバル化」でした。賃金が安い方に労働が向かうだけでなく、経済が複雑化すると高度な情報の収集力と解析力がなければ「富が集まる新システム」を考案することもできないからです。市場はますます富裕層や資本家に有利になっていきます。
つまりローカル化によって、「r>g」の「>」は縮小する可能性があります。tooシンプルに言えば経済を「グローバル化」するのではなく「“ド”ローカル化」すれば“g”の縮小を緩和できるかもしれないのです。
「グローバル化の拡大は誰にも止められない…」
「“r>g”もだれにも止められない…」
と半ばあきらめモードだった中でD.トランプ大統領の登場によって私たち労働者にも「富を集める新システム」を作れる可能性が広がったのです。ピケティの方程式を本当に壊すのは私たち自身の「実効性のあるイノベーション」です。あなたもこのチャンスに「富を集める新システム」を考案して、ピケティ教授の方程式を打ち破ってみましょう!
神奈川大学教授・臨床心理士
日本心理学会代議員
杉山 崇