【映画評】マイ・ベスト・フレンド

渡 まち子

ロンドンで暮らすジェスとミリーは、ファーストキスから初体験まで、お互いのことは何でも知っている数十年来の親友同士。喜びも悲しみも、すべて分かち合ってきた二人の友情は永遠に続くと思っていた。だがミリーに乳がんが見つかり、同じころ、ずっと不妊治療を続けてきたジェスは待望の子どもを授かる。真っ先にミリーに報告したいジェスだったが、ミリーの病気のことを思うとどうしても妊娠を伝えられない。二人は、互いのことを思いやるがゆえに、言葉にできないことが増えていく…。

幼なじみで親友同士の女性二人の深い友情を描く「マイ・ベスト・フレンド」。同性の友情を描く映画は、圧倒的に男性の友情物語が多い。名作と呼ばれるものも多くが男性優位なのは認める。だが女性同士だって、確かな友情は存在するのだ。妊娠、出産という命を育む役割だからこその悩みや喜びが描けるという点も強みである。ミリーは、ファッションも生き方も情熱的で圧倒的なカリスマ性があるセクシーな女性。バンドマンと結婚し、子どもにも恵まれ、PR会社のキャリウーマンとして仕事もバリバリにこなす。少々エキセントリックな性格のミリーを大らかな優しさで包むのがジェスで、都市設計家の仕事を得て、ボーイフレンドとテムズ運河に浮かふ゛ボートハウスに居を構える。まるで正反対だからこそ、惹かれあい補い合える二人なのだ。乳房摘出などのがん治療から女性であることを失くしていくことに怯え、精神的に不安定になるミリーの過激な行動は、決してほめられたものではない。だが、映画は、ミリーの弱さや身勝手さを決して責めず、ユーモアと本音で描いている。そんな妻の心と身体の変化にとまどう夫のダメっぷりもまた、人間臭くて、リアルだ。

ガンという悲劇の前で、登場人物たちは恰好つけたり、善人ぶったりしない。ミリーを失う悲しみを親友のジェスがどう乗り越えるのか。そこに女性ならではのしなやかな強さと、命をつなぐ大切な願いがある。監督や脚本も女性が担当する、女性のための女性映画は、難病ものではあるが、決してしめっぽくないのがいい。ジェス役ドリュー・バリモアとミリー役トニ・コレットは、むしろ逆の方がしっくりくる気がしたのだが、見終われば、この配役に何も文句はなかった。二人の演技力のたまものだろう。
【60点】
(原題「MISS YOU ALREADY」)
(イギリス/キャサリン・ハードウィック監督/ドリュー・バリモア、トニ・コレット、ドミニク・クーパー、他)
(ハートフル度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年11月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。