不祥事が隠せなくなる透明化社会

昨今、SNSによって「透明化社会」が実現しつつあるという論調が大きくなっています。

「透明化社会」という用語は、1999年にSF作家のデビッド・ブリンが同じ題名の著書を書いたのが始まりです。現代の私たちは、政府やグーグルに個人情報を把握され、至る所に設置された監視カメラに写されています。Facebookでは、誰がどの地域に旅行しているかも教えてくれます。

私達個人の情報が透明化されるだけでなく、共監視が起こるとするのがブリンの考えです。政府や大きな組織が個々人の情報を一方的に奪っていくのではなく、情報の対称性が生じ、政府や大企業の極秘情報ですら簡単に私達に公開される時代がやってくるとうのです。

かつてのスノーデン事件に端を発し、昨今ではパナマ文書で権力者たちのスキャンダルが暴かれました。電通はネット広告詐欺と過労自殺事件でネット上で叩かれて会社の方針を転換せざるを得なくなっています。五輪関連の莫大な無駄遣いや豊洲移転問題も、(小池知事の尽力があったとはいえ)ほとんどの国民の知るところとなりました。

ネット上には無数の監視の目が光っており、政府や大企業は嘘をつき続けることができなくなっています。「それは違う。嘘だ」という一人の声が、あっという間に広がってしまうからです。権力者の言動ををたまたま知った人が、SNSに投稿してしまうかもしれません。

このような社会においては、アラブの春のように革命が起こって甘い汁を吸っている一部の権力者が倒されることもあるでしょう。倒されたくなければ、政治も会社もより透明なものに変わらざるを得なくなります。ある意味、真の民主化が進むのかもしれません。

政府も企業もメディアも、民意を意のままに動かすことは出来ません。英国のEU離脱国民投票はそれを如実に物語っています。どんな組織や個人であっても、反社会的な行為は瞬時に糾弾され、社会的生命を絶たれる人が続出するでしょう。

私達個々人の情報が透明化されてしまうというデメリットもありますが、それ以上のメリットがあると私は思っています。かつて幅を効かせた「密室での話し合い」の多くが公にさらされるリスクがあるので、政治も企業統治も透明化されて合法的なものに変わっていくでしょう。合法であっても「人道的見地から妥当でないもの」や「環境破壊のような反社会的行為」は、政治家や経営者にとって命取りになります。

その結果、公的、私的な権力はより正しく妥当な方法で行使されるようになるはずです。まさに「民意尊重の時代」です。旧時代の感覚のままでは大惨事が待ち構えていると考えた方がいいでしょう。マインド・リセット浸透するまでの間に、おそらく多くの不祥事や不都合が公にされるはずです。より広範囲に、そしてより大きな影響力を持って…。思い当たることのある方は、今からでも遅くはありません。全て公開して謝罪しましょう。自発的に覚悟を決めた人に対しては、ネット社会はメディアよりも寛大なはずです。

荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2016年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。