来年のシチリア・サミットの参加首脳はこうなる

八幡 和郎

今年の伊勢志摩サミットで記念撮影するG7首脳。来年のシチリアでの顔ぶれはどうなる?(首相官邸サイトより:編集部)

伊勢志摩サミットが終わってまだ半年もたっていないが、来年にイタリアのシチリア島で開かれるサミットの参加者がだんだん見えてきた。リーダーシップの発揮が難しくなりそうだが、そのなかで、安倍首相の立ち位置はかなり良いものになるかもしれない。

アメリカはオバマ大統領に代わってトランプが初登場。マルチの首脳会談におけるトランプの出方はまったく検討もつかないが、政策的な孤立と経験のなさでリーダーシップを発揮することは難しい。

フランスは11月27日に行われる中道右派の共和党の予備選挙で、ダークホースだったフィヨン元首相が予想外の勝利を収めそうだ。つい二週間ほど前までは、20日の第一回投票で七人の候補者のなかで中道左派からも支持を受けるジュペ元首相とフランスのトランプというより橋下徹的なサルコジ元大統領の争いと見られていた。

ところが、三度のテレビ討論で地味と見られていたフィヨン元首相が予想外に議論をリードし、世論調査でサルコジ氏と肩を並べていたが、蓋を開けたらジュペ氏にも圧勝。決選投票を前にした24日夜のジュペ氏との討論では71%の視聴者がフィヨン氏が優勢だったと答える圧勝。

もはや勝負は付いたし、来年5月の本選挙でも、よほどの大スキャンダルにでも巻き込まれない限りはフィヨン氏で次期大統領は決まりの情勢。経済ではフランスのサッチャーをめざして自由化をめざし、価値観では伝統主義、外交政策ではプーチンやアサドと和解することを主張。プーチンはわざわざフィヨン氏を信頼に値する指導者として激賞(プーチン首相時代にフィヨンも首相)。

イギリスはメイ首相が安泰だが、外交的立場は強くない。ドイツの総選挙は秋だからメルケルはそのままだが、クリントンと相思相愛だっただけにトランプとは気まずそう。カナダのトルドーはリベラルなのでトランプとは厳しい。

残るはイタリアのレンツィで、開催国のトップだ。民主党だが右派の評判も悪くないし安倍首相とも関係良好。ところが、上院の権限縮小をめぐる国民投票が12月4日に予定され、状況はやや厳しく、敗北したら辞任だといっている。

そうなると、モンテパスキ銀行の経営危機などを抱えるイタリアは大混乱に陥り、ユーロも大揺れが予想される。もちろん、後任など予想さえ付かない。

[FT]イタリア国民投票にかかるユーロの未来 :日本経済新聞

こういうとんでもない組み合わせのなかで、安倍首相はかなりリーダーシップをとりうる好位置につくのだが、写真の真ん中にいてうれしいなどと喜んでおれない難しい状況で世界のトップリーダーの一人として重い責任を負うことになろう。

そして、再来年のカナダでのサミットにはメルケルも消えてプーチンが再登場するというのもありえそうだ。