地方議会と首長の役割分担が大きな問題になる―小池革命のはじまり

早川 忠孝

東京都議会には長年政党復活枠なるものがあった、と聞いて驚いている。

実に200億円も復活枠があったというのだから、さぞ議員間、政党間で復活枠の熾烈な分捕り合戦が行われていたのだろう。

こういう枠があることが知れ渡っていたら、東京都の予算を獲得したい団体や個人は様々な伝手を頼って復活枠の獲得のために動いていたはずだ。

200万ではなく200億だ。
200億円もの宝の山が目の前にあるのだったら、別に物欲しげな人でなくてもなんとか自分のものにしたくなる。

当然議会の多数派の思うとおりになり、しかも議会の多数派の中で実質的に多数派を支配している一部の幹部の人たちの思い通りになってしまう。

ああ、なるほど、これがボス支配の元凶だったのか、ここを根本的に改めないとなかなか都政の改革は出来ないな、と思うようなクリティカルポイントだったということが次第に分かってきた。

200億円を自分の思い通りにできる人に大変な力が付くだろうことは、見易い道理である。

勿論原資はすべて都民の税金なんだが、都民の税金の使い方を決めることが出来る人に如何にもその200億円が帰属しているかのように錯覚させるところがある。

人を動かすのは、地位と名誉と金だと言われている。
地位と名誉と金の中では、多分金の力が一番大きいだろう。
予算編成には地位も名誉も関係ないだろうから、結局は金の力が一番大きいことになる。

金が欲しい人、予算を獲得した人がどんどん集まってくる。
あまりにも偏頗なこと、不公正なこと、違法なことをしたらいつかは誰かからさされてしまい失脚する羽目になるだろうから極端に偏頗なことや不公正なこと、違法なことはしないだろうが、それでも200億円の使途を決めることが出来る人には大変な力があることになる。

地方議会の議員を選ぶ普通の選挙民には、地方議会の議員や政党にそんな力がある、などと言うことは伝わっていなかったはずである。

ただ自分たちの代表者を議会に送る、ぐらいの感覚で地方議員を選んでいたはずだ。

小池知事は、この200億円の政党復活枠なるものを廃止することにしたそうだ。

都政にどっぷり漬かって感覚が麻痺しているんじゃないかと思われる東京都の元副知事が、そんなことをしたら都議会と都知事の関係が険悪になるんじゃないか、と心配していたが、予算編成権は都知事にあることは間違いないのだから、それこそ余計な心配と言うべきだろう。

200億円もの予算を自分たちの自由に差配できるということになったら、それ以外の予算に対するチェックが甘くなることは必至である。

まあ、実際に都政の執行に当たる知事部局としては、都議会が200億円の政党復活枠にのみ注目し、その他の項目についてはほぼノーチェックということになれば議会対策がやりやすいと言えばこれほどやりやすいことはないだろうが、しかし都民の立場に立って考えれば都議会は都政の大部分についてノーチェックだったのか、ということになる。

東京都政大改革、東京都議会大改革が必要だったのは、自明のことである。
東京都は伏魔殿だと長年言われてきたことの一因には、どうやら知事部局と都議会の間に一種の馴れ合い、もたれ合い体質があったということだろう。

当然、自民党都議団は、200億円の政党復活枠の廃止に猛反対するであろう。

小池さんは東京都政に蔓延っていた長年の旧弊、悪習を一気に廃止する挙に出たということだ。

多分、ガチンコ勝負になる。

東京都政から、皆さん、また目が離せなくなるはずだ。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。