これから年末が近づいてくる。今年は休みをうまく取ることで長期休暇が可能だ。23日の祝日から長めの連休をとって、年末年始に海外旅行を計画されている方も多いだろう。海外に行けば、財布の紐がゆるむ。もしブランド品や雑貨を買うのと同じくらいの気持ちでビジネスが可能だったらと考えたことはないだろうか。
今回は、『個人ではじめる輸入ビジネス』(KADOKAWA)の著者であり、ジェトロ認定貿易アドバイザー(現AIBA認定貿易アドバイザー)として活動をする大須賀/祐(以下、大須賀氏)氏に「海外ビジネスにおける交渉のコツ」を伺った。ジェトロ認定貿易アドバイザーとは、貿易関連資格ではトップクラスに難易度の高い資格とされている(2008年にAIBA認定貿易アドバイザーに組織変更)。
■言葉の壁などなかった
もしあなたが海外とビジネスをする場合、一番のネックは言葉の壁ではないだろうか。
「現地の言葉を話すことができなければ交渉ができないのでは?と聞かれることが少なくありません。世界共通のビジネス用語は英語です。ですが、英語がカタコトだからといって相手にされないとか、冷たくされるなどということはありえません。それは、海外のメーカーから見れば、我々はお客様だからです。」(大須賀氏)
「外国人がわざわざ自分の商品を買い付けに来てくれている、彼らはモノが売りたいのです。どんなに英語がひどかろうが、逆に、なんとかしようと向こうから歩み寄ってきてくれます。これはビジネスの原則です。」(同)
ビジネス英語は、専門用語もあるだろうし、素人の自分にできるだろうかと不安があるだろう。しかし大須賀氏によれば、日常会話よりビジネス英語の方がはるかに簡単らしい。そこで世界一簡単なビジネス英語を3つ伝授したい。この3つをマスターすれば海外で立派なビジネス業者になれるとのことだ。
「まず、あなたが外国の展示会などで自分の商品を探しているところを想像してください。展示会とは、ショッピングモールのようなものです。大きな建物の中に通路を挟んで様々なお店が並んでいるところです。そこであなたが『これはいい!』と思えるようなお気に入りの商品を見つけたとします。」(大須賀氏)
■微笑みながらブースにはいれ
そこでは、まずはにっこり微笑みブースに入ろう。このときの最初の言葉が重要になる。大須賀氏によれば、この言葉で交渉の33%は終わったようなものだそうだ。
「まず最初に、Hi(こんにちは)と声をかけます。この瞬間、相手にはあなたが自分の商品に興味を持っていることが伝わります。しかも、あなたは笑みを浮かべています。相手も好感と期待を持って迎え入れてくれることでしょう。つかみはこれだけです。」(大須賀氏)
実はこのような話がある。日本人はHello、Hi、の使い方が上手くない。基本的な意味としては挨拶であることには間違いないが、Helloは最もフォーマルな表現になる。Hiはカジュアルな場面で使用する。接客などの場面ではHiのほうが多い。厳密な決まりがあるわけではないが、Hiはどのような場面でも使うことが可能だ。
「Hiでフレンドリーな関係を築いて、お目当ての商品が見つかったら、次はHow much(いくらですか?)と聞きます。慌てずにペンと紙を渡せば具体的な数字を教えてくれるでしょう。また、相手の言葉が分からなかったり、聞き取れなくても、同じように紙に書いてもらうようにします。この時点での交渉は必要ありません。」(大須賀氏)
しかし、交渉をしなければ取引を完了することができない。必要はないのだろうか?
「商品や取引条件についてあなたはもっと知りたいはずです。名刺交換をしたら、後ほどメールで商談を進めることを話して、ブースをあとにしてください。E-mail you latter(あとでメールします)と伝えればあとはメールでのやりとりです。ビジネス用の文章は簡単で、サンプル豊富です。翻訳サイトなども充実しているので困ることはありません。」(大須賀氏)
いまの3つの言葉は、大須賀氏が四半世紀前の輸入ビジネス開始当時に使ったものだそうだ。いまでもビジネス英語が苦手な人に脈々と受け継がれている言葉でもある。
「当時は、E-mail you ではなく、Fax you でしたが。この方法で通じなかったことはありません。結局のところ、人間同士のコミュニケーションでは好意と興味を伝えることができれば、相手もあなたのことを信用するし、良好な関係を築けるはずです。」(大須賀氏)
■伝わればオッケーである
この本に書いてある通りにすれば、面倒な途中経過を一気に短縮して、海外で商品発掘を楽しむインポーターになれる。今では、iPhoneの音声認識機能やグーグル翻訳などの自動翻訳機能を使って、交渉している人もいるそうだ。伝わればオッケーなのである。
「相手にとって、あなたはお客様です。しゃべれないからといって、門前払いされるようなことは絶対にありません。私のクライアントの中には、英語が全然しゃべれなくても、独占販売権を3つ持っている方や、上場企業と取引している方も大勢います。みんな、最初は不安を感じますが、語学が壁にならないことを実感するのです。」(大須賀氏)
外国人とのビジネスの交渉だからと難しく考える必要はなさそうだ。商品への愛情と興味があれば、両者の心はダイレクトにつながる。言葉の壁などないに等しいのかも知れない。
尾藤克之
コラムニスト
アゴラ出版道場、第1期の講座が11月12日(土)に修了しました。12月6日に「第3回アゴラ著者入門セミナー」を開催しました。「第4回アゴラ著者入門セミナー」は、来年、1月31日の開催予定です。
なお、第2期出版道場は、来春予定しています。