職員(公務員)給与、議員報酬増やしても納税者のメリットは不明

伊藤 陽平

本日は第4回定例会の最終日でした。
追加議案により、職員給与、議員報酬が増額されることになりました。

去年の記事はこちら↓
平均約700万円の新宿区職員給与増額へ!任期中は減額(増額凍結)に賛成

自治体ではありませんが、よく注目されるのが、国家公務員の給与増額。
メディアでもよく取り上げられており、
「払いすぎだ!」
と煽るようなメディアも多いと感じています。

一方で、これだけ取り上げられているのに減額されないのは、民主主義を経て支持され続けているものだと考えられます。

先ほどのような「減額をすべきだ」という意見もありますが、
「こんな安い給料じゃ自治体職員や議員なんて絶対にやりたくないし少し増額しても良いんじゃないか。」
と考えている方もたくさんいらっしゃいます。

安いか高いかという議論自体が難しく、職員給与や議員報酬の決定プロセスを妥当なものにすることが求められています。

今回給与の増額をする際には、特別区人事委員会が企業規模50人以上で、かつ事業所規模50人以上の事業所を対象とした調査を行いました。
民間給与の平均値を算出し、民間給与と公務員給与の差を増額調整することが勧告されています。

しかし、この算定方法では金融や商社など給与水準の高い企業が多く含まれることや、平均値の場合、ある一部の高所得者が値を大きく引き上げることになります。
そのため、昨年のブログでもご紹介しましたが、民間の実態を反映させるという前提であれば、最頻値の導入を検討することが必要です。

そして忘れてはならないのが、納税者の視点です。
今回の給与増額により、トータルで約1億4,000万円もの影響が出ます。

もちろんこの金額で福祉を充実させることもできますし、そもそも納税者に対して負担を強いるということは、程度の差はあっても彼ら彼女らの自由を奪うということを意味します。
すでに約2,000億円もの予算規模があるため、大きなご負担をいただいているところですが、今回給与を増額するにあたり新宿区民に対価があることを示すことが前提となるはずです。
しかし、今回は単に特別区人事委員会勧告に従っているもので、極めて不透明なものとなっています。

また、他にもおかしいなと思ったことがありました。
私は文教子ども家庭委員会に所属しているため、教育長の給与に関する議案を審議しました。

まず、教育長に関しては、月額1,000円の増額が決まりました。
この増額に伴って、当初予算で足りない分は補正予算を計上することになりますが、なんと補正した額はたったの5,000円。
職員の平均給与は700万円/年ですが、条例を改正したり、このためにも会議を行い、事務作業が必要となっています。
それに割かれるリソースを考えれば、月額1,000円を増額するデメリットの方が大きい事例だと言えます。

特別区人事委員会勧告は尊重すべきものですが、法的な拘束力を持ったものではありません。
今後は他人任せな制度ではなく、責任を持って自治体ごとに決めるべきです。

私たち議員も、特別区人事委員会勧告により議員報酬が月額にして1,000円の増額になります。
37名もの議員がいることを踏まえると、これも積み重なれば少ない金額とは言えませんので、やはり増額することには反対です。

そもそも議員が自分たちの議員報酬を自分たちで決めているような状況自体もおかしいですよね。

多数決では無力ではありますが、今年も単独で関連議案すべてに反対させていただきました。
結果として議案はすべて可決されましたが、政治的パフォーマンスで終わらせるつもりは一切ありません。

都政に目を向けると、小池都知事が給与を半減したことを受けて、都議会の中では議員報酬に関しても議論が活発になる見通しです。
そうなれば、今度は職員給与まで議論が広がる可能性は十分にあるでしょう。

改革とは、世論の流れに押されながら進むものです。

今回の新宿区議会定例会でも、議員活動ができない期間があった場合に報酬を削減するという議員提出議案が可決されています。
杉並区選挙管理員会では、長期欠勤していた委員に多額の税金が投じられていたことが、世論で問題になりました。
新宿区議会でこれまでそのような事例はありませんでしたが、 そのことを踏まえ、議員も活動実態に応じて報酬が支払われるよう条例制定に至りました。

このように、世論の影響により改革が進んでいくことになります。
今回東京都で改革が行われることで、区市町村に関しても同様の議論が行われるチャンスがやってくる可能性があります。

しかし、職員給与や議員報酬の実態に関しては、あまり一般の方には周知していないのが現状だと認識していますし、感情的に「身を削れ」という議論だけでは望ましい結果にはならないとも考えています。
そのため、制度の周知も必要だと考え、今後も地方議員として情報発信を欠かさず世論の醸成に取り組みながら、議会内外にもあらゆる手段を駆使して政策を実現していきます。

それでは本日はこの辺で