私は息を吐くように小池劇場をこのように分析する

尾藤 克之

アゴラ編集長就任1年で月間1000万PVを実現した編集長の新田(「言論アリーナ」より)

「息をするように嘘をつく」とは党首討論での蓮舫氏の言葉であるが、少々使い方を間違えている。「息を吐くように嘘をつく」が正しい使い方だろう。「息をするように嘘をつく」でも悪くは無いが、息は吸うか吐くかしかない。嘘はつくもの(吐くもの)だから、「息を吐くように嘘をつく」が正しいのである。

■選挙前から驚嘆させられた小池氏の演出力

さて、今年ほどネットメディアが注目された年は無かった。アゴラでも、都知事選、参議院選、その後は蓮舫氏の二重国籍疑惑を追及したことで注目が集まった。今回は、『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』の著者であり、アゴラ編集長の新田哲史(以下、新田氏)に、一連の報道の流れを振り返ってもらった。

小池氏は女性閣僚として環境相、防衛相を歴任している。実は、女性キャスターとしての経験と発想力を生かし、政界でも斬新な取り組みをしてきた。都知事選における小池氏の手法は興味深かったと新田氏は次のように語っている。

「都知事選出馬時の小池氏は、自民党の公認を得られず、組織的な後ろ盾がありませんでした。しかし、出馬前から持ち前のPR手腕を見せつけました。参院選投票終了直後、マスコミがあふれる自民党本部に突如現れ、推薦取り下げ願いに現れました。」(新田氏)

「一見なんの変哲もないキャンセルの手続きに見えますが、政党は意中ではない候補者に推薦を出すはずはありません。それでも報道陣の前に現れたのは、テレビの露出を増やして戦う姿勢を都民にアピールするメディア戦術でした。」(同)

■ネットメディアが引導を渡す時代に突入した

しかし、テレビの特性を熟知している小池氏といえども、ネット時代のメディア選挙をどう戦ってくるか、当時は未知数な部分があった。有力候補の小池氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏、各陣営のウェブサイト、SNSの発信について際立った差はないように見えた。

「デジタル時代のPR戦略では、企業マーケティングがすでにそうなっているように、自社メディアだけでなく、第三者からいかに自分たちに良い評判を獲得できるかの力量が問われつつあります。」(新田氏)

自社メディア、ペイド(広告)メディア以外に、コントロールできない領域、例えば報道機関のネニュースや言論サイト等の論調について関心が高まったというのだ。選挙序盤のある機関の情勢調査では、組織力のある増田氏、鳥越氏が小池氏をリードしていたという話もある。しかし、鳥越氏は週刊誌に女性スキャンダルをスクープされてネット上も大炎上。

さらに増田氏に対しては岩手県知事時代などの行政手腕を巡って、渡瀬裕哉氏がアゴラで『増田寛也・公共事業で借金倍増1兆円の過去』と題した記事を投稿。ほかにも政治や選挙に知見のある複数の専門家が、第三者の立場からネットメディアで増田氏を厳しく論評する記事が相次いで掲載され、思わぬ苦戦を強いられることになった。

「スマートフォンのニュースアプリが国民的に普及するようになり、新聞やテレビ等、記者クラブ発の無難な選挙報道の記事と並列で、アゴラ等のネットメディアから流れるエッジの立った記事が多くの人に読まれるようになりました。」(新田氏)

「毒にも薬にもならない」報道に終始する大手メディアを尻目に、発信力のあるネットメディアへと注目が集まったのはこのような理由があったものと考えられる。

■ネットメディアの潮流を俯瞰する一冊

本書は政治経済をジャンルとするノンフィクションである。ネットメディアの最前線にいる新田氏が今年の具体的な施策や効果についてつまびらかに綴っている。実はアゴラの昨年同時期のアクセス数(月間)は、単体で300万PV、Yahooニュース等への配信分も含めても全体で700万PVほどだった。それを新田の編集長就任以降は、1年を経ずに、単体1000万PV、全体3000万PVを実現している。

政治経済に関心のある方にはもちろん、ネットメディアに関わる方、さらには個人でブログを開設している人にも役に立つだろう。アゴラにおける、この1年間の全ての施策や流れ、そして結果が把握できるからである。ネットメディアの潮流を俯瞰したい方にとって、これ以上の教材は存在しないと確信している。

尾藤克之
コラムニスト

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