4人の枢機卿、「法王文書」へ質問状

4人の枢機卿がフランシスコ法王宛ての一通の書簡を公表し、離婚・再婚者の聖体拝領問題でその真意を質したことが明らかになり、バチカン法王庁内で物議を醸している。

▲復活祭の記念礼拝をするフランシスコ法王は17日で80歳の誕生日を迎えた(2016年3月27日、独公営放送の中継から)

4人の枢機卿は、ヨアヒム・マイスナー枢機卿、ヴァルター・ブランドミュラー枢機卿の2人のドイツ人枢機卿、米国人のレイモンド・レオ・バーク枢機卿 、そしてイタリア人のカルロ・カファラ枢機卿 だ。4人の共同署名の書簡は11月に公表された。

フランシスコ法王は4月8日、婚姻と家庭に関する法王文書「愛の喜び」(Amoris laetitia)を発表した。256頁に及ぶ同文書はバチカンが2014年10月と昨年10月の2回の世界代表司教会議(シノドス)で協議してきた内容を土台に、法王が家庭牧会のためにまとめた文書だ。“現代の家庭生活”についてのフランシスコ法王の指針と受け取られている

その中で「離婚・再婚者への聖体拝領問題」について、法王は「個々の状況は複雑だ。それらの事情を配慮して決定すべきだ」と述べ、法王は最終決定を下すことを避け、現場の司教に聖体拝領を許すかどうかの判断を委ねている。

カトリック教会ではこれまで離婚者・再婚者には聖体拝領は許されてこなかったが、離婚再婚者の数が増え、彼らに聖体拝領を拒むことは教会にとっても次第に難しくなってきた。離婚・再婚者への聖体拝領問題は家庭問題を扱ったシノドスで集中的に議論されてきたテーマだ。

4人の枢機卿は9月、フランシスコ法王に手紙を送り、離婚・再婚者への聖体拝領問題について、「法王文書の内容については、神学者、司教たち、信者の間で矛盾する解釈が生まれてきている」と説明、法王に明確な指針の表明を願うとアピールしている。

4人は「離婚・再婚者に聖体拝領を例外的に許することができるのか」と尋ねたが、法王からは返答がなかった。そこで先月、4人の枢機卿は署名入りの書簡を公表することに踏み切ったわけだ。

バチカン放送によると、バチカン内では「ローマ法王の文書内容に疑問を呈するとは考えられないことだ。スキャンダルだ」という批判の声が聞かれる。

スペイン出身の枢機卿はバチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」11日付に寄稿し、「4人の枢機卿はローマ法王 Amoris laetitia の内容を正しく理解していない。彼らの疑問は妄想だ、ローマ法王は明確に述べている。理解するために法王文書をゆっくりと読めばいい」と皮肉交じりに批判している。同枢機卿の寄稿文のタイトルは「理解しようとすればそれで十分」というもの。バチカン日刊紙にそのような寄稿文が掲載されること自体、非常にまれなことだ。

バチカン内部からの批判に対し、4人の枢機卿は「われわれはローマ法王の敵ではない。われわれはローマ法王と心を一つとする者だ。同時に、貧者たちの幸せに心を砕く者だ。様々な解釈を排除し、分裂を防いでほしいだけだ」と説明している。

聖体拝領問題を現場の司教の判断に完全に委ねる時、聖体拝領が許されたり、拒絶されたりといったケースが出てくるだろう。そうなれば、信者たちの間に混乱と不信が出てくることが十分予想される。4人の枢機卿の懸念は理解できる。

ドイツのヴァルター・カスパー枢機卿は「秘跡(聖体拝領)は、それを一番必要としている人を除外して善人や選ばれた人に与えられる特権ではない」と述べている。

参考までに、フランシスコ法王は14日の説教で、教権主義とインテリの宗教を厳しく批判している。この内容は、4人の枢機卿の書簡に対する法王の返答ではないか、と受け取られている。

なお、フランシスコ法王は17日、80歳の誕生日を迎えた。公式の誕生日祝賀会は法王の意向もあって予定されていないという。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年12月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。