夢を実現すると評判の日本一の講師オーディションに参加してきた

尾藤 克之

講師オーディション会場にて。

今回、ご縁があり、「第7回全国・講師オーディション」(主催:志縁塾、特別協力:フジサンケイビジネスアイ)に審査員として参加してきた。主催代表の、大谷由里子氏は故横山やすし氏のマネージャーをつとめ、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなど当時、若手だったタレントを次々に売り出したマネージャーとしても知られている。

■“がむしゃらに頑張る人”は強かった

本オーデシションは志のある人を、全国から発掘するため 2010年より始まった取組みである。今回は事前の予選会を勝ち上がった12名のみに与えられた最終ステージである。会場は超満員で500名は超していただろうか。出場者は10分の持ち時間で自らの思いを聴衆に伝えなければいけない。イメージはかつて放送されていた「スター誕生」に近い。

会場にいる一般観覧者、審査員、ネット中継によるWEB観覧者の投票によって優勝者が決定される。優勝者には100万円が進呈され、その他の表彰者にもメディアデビューや出版など多くのチャンスがある。実際に私のまわりには数多くの出版関係者やメディア関係者が座っていたので、注目度は高かったのだと思う。

今回の優勝者は、武藤正幸(我武者羅應援團、総監督)氏である。我武者羅應援團はプロ応援団として活動をしている。これまで、リオのオリンピック、NHK紅白歌合戦など、10年間で1000回の応援を行なってきた。聴衆の惹きつけ方、声の抑揚やノンバーバル、タレント性、計算されたそのテクニックは秀逸だった。

しかし、優勝した武藤氏のスキルは秀でているが、それ故に唯一無二である。例えば、講演(研修)として同日に10コマお願いしようと思っても対応は難しいだろう。ビジネスとして考えた場合、講演(研修)要綱があり、同一水準に近いレベルでナレッジされていると依頼する側は安心できるのではないかと思う。

気になった点もあった。それは出場者の多くが“感動させるコンテンツづくりに腐心していること”である。どれもがストーリーが出来上がっていてフィクションにも聞こえてしまう。それらの視点を与した場合、私の中の1位は石川和男氏だった。2位は武藤正幸氏だった。出場者のコンテンツはどれもよく練られていて見応えがあった。

最近では、講師になりたい人が増えているという。講師には資格があるわけではない。名乗ればその時点から講師である。クオリティ維持のためにも、講師の基準を策定するなど新たな施策が必要であるようにも感じた。

■ご縁をよんだ講師オーディション

所用があったことから、終了後はすみやかに失礼した。帰宅したら、アゴラ出版道場でお世話になっている、左右社の樋口博人氏から献本が届いていた。タイトルは『障がい者の就活ガイド(紺野大輝:著)。読み進めると、紺野氏が前回の第6回オーディションで奨励賞を受賞していることが分かった。

講師オーディションに審査員として参加した当日に、前回受賞者の著書が届くとはなんという偶然かと驚いた。障害者の就活にフォーカスした本をはじめて読んだが、胸があつくなった。それは前向きでポジティブな言葉で語られていたからである。障害者支援の活動をしていると、偏見の苦しみや怒りの声を聞くことが多い。しかし苦しみや怒りだけで世の中を変えることはできないし、共感させることも難しい。

紺野氏はオーディションの冒頭で次のように語っていた。「これまで障害者と働いた経験がある方は手をあげてもらえますか」。一般的には働いた経験はおろか接したことも無い人が多数ではないだろうか。障害者や家族は、日々の偏見に苦しんでいる。偏見を無くすためには、一般的にも広く障害のことを知らしめなければいけない。そして啓蒙と理解が進むことを期待している。その役割をこの本が担っているのだと確信した。

紺野氏にとっては夢を実現した著書だと思う。「障害者の就活」にフォーカスする難しいチャレンジを形にした、著者の紺野氏、編集の樋口氏に僭越ながら敬意を表したい。

追伸

なお、私は表記について「障害者」を使用している。「障がい者」は使用しない。過去には、多くの障害者が権利を侵害されてきた歴史が存在する。それらの歴史を、言葉を平仮名にすることで本質をわかり難くする危険性があるため「障害者」を使用している。

尾藤克之
コラムニスト

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