「フィンテック」と「不動産テック」は、別モノであると思う理由

横浜にある不動産物件の視察に行ってきました。年末に入ってきた物件情報に興味を持って、未公開物件情報に強い日本不動産投資アドバイザリーの竹内社長に、無理を言って年初早々から案内してもらいました。まだ現状調査の段階ですが、今後の進捗は資産デザイン研究所メールなどで公開していく予定です。

金融の世界では「フィンテック(Fintech)」が、バズワードになり、広がりを見せています。金融(Fin)の世界がITの技術(Tech)と組み合わされて、ロボアドバイザー、仮想通貨、会計管理、クラウドファンディングといった新しいビジネスチャンスが生まれてきています。

不動産の世界でも「不動産テック」と呼ばれる似たような動きが見られます。不動産の世界にITを結び付けようという2匹目のどじょうですが、フィンテックと比べるとその道のりは厳しいと思っています。

その理由は、情報の非対称性と取引の複雑さです。

例えば、中古の一棟ものの優良案件はほとんどネット上に公開されない未公開物件です。情報にアクセスできる人たちだけが、割安な物件や市場に出てこない物件を取引している状態です。比較的価格の比較がしやすい中古のワンルームマンションも大手企業の多くが販売しているのは、自社が売主です。他社では情報の入らない物件です。ほとんどの個人投資家は、このように不十分な情報の中で意思決定をしなければならない状態にあるのです。

もう1つの取引の複雑さというのは不動産投資の独自性にあります。

不動産物件の評価には様々な要素が影響します。駅からの距離、土地の形状、道路付け、建物のクオリティ、間取り、見た目、構造、施工会社、周辺環境、周辺物件の供給・・・。さらに、購入に伴うファンナンス(融資)は個人の属性や金融機関によっても大きく変わります。

これだけの複雑な要素を、情報の非対称性が存在する世界でIT技術を駆使して分析しても、正しい結果は導かれません。

良い悪いは別にして、日本の不動産仲介の業界は未だに電話やファックスの占める比率が高くなっています。そして、取引する会社の担当者同士の新密度が取引の優先順位に影響したりする、義理人情の「昭和な世界」が残っているのです。この状態は、これからも変わっていく気配はありません。

金融取引と不動産取引は同じ資産運用でもまったくの別世界というのが私の結論です。だから、不動産投資で成功したければ、金融商品とは違ったアプローチで、情報の非対称性を自分のメリットにする方法を考える必要があるのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。