役員報酬をどのように決めるのが合理的か?

日本企業でも屈指の高額報酬とされる日産ゴーン社長

会社の経営陣である取締役は、株主総会の委任を受けて経営に従事する者で会社に雇われている従業員とは法的性格が全く異なります。

前者が委任契約であるのに対し後者は雇用契約です。取締役には善管注意義務と忠実義務があり、経営のプロとして全力で株主の期待に応えなければなりません。

そのようなことから、取締役報酬(役員報酬)は株主総会の決議で決められます。
もっとも、総会では総額を決議するだけで、各取締役に具体的にどれだけ配分されるかは取締役会に委ねられています。昨今は上場企業の年俸が1億円以上の取締役の名前の公表が義務付けられており、日産のゴーン氏の報酬の高さが注目されたりしています。

さて、この取締役報酬はどのようにして決めればいいのでしょうか?

エージェンシー理論を使って説明されることが多いようです。エージェンシー理論を極めて単純に説明しますと、一定額を報酬として与えるだけだと取締役は頑張らずにサボった方が得になります。同じ給料だったら余暇を楽しんだ方が得だと考えるわけですね。

そこで、取締役を努力させるためにはサボるよりも努力した方が有利になる報酬体系を設計するのがエージェンシー理論です。

詳細は省きますが、業績連動要素を報酬の中に大幅に取り入れれば取締役は努力をするようになるはずです。努力すれば報酬は上がるけど、努力しないと報酬が下がるからです。

取締役報酬を、①基本報酬、②年次賞与、③長期インセンティブ(ストックオプション)に大きく分けると、日本の企業の平均は、①が60%、②が26%、③が13%となっています。これに対して、米国の企業の平均は、①が11%、②が21%、③が67%となっており、業績連動部分が9割近くに上ります。

基本報酬が多い日本では、業績を上げて株価を上げても実入りはあまり増えない反面、業績不振や不祥事が発覚すると基本報酬の返上を迫られるので、経営者がリスクを避けて保守的になる傾向があり、逆に米国では積極的に業績を上げないと報酬が増えないので投資等のリスクテイクが果敢になると言われています。このような指摘を受けてか、資生堂が業績連動部分を50%に引き上げたことが注目されています。

とはいえ、業績は取締役の努力だけでなく外部環境にも大きく左右されます。日本企業の場合、総じて取締役の経営能力が低いと言われているので(失礼)、円安になれば好業績になり円高になれば業績が悪化する会社がたくさんあります。為替変動という外部要因に業績が大きく左右されるのです。

そこで、委員会設置会社にして報酬委員会が報酬を決定するという方式が、最近とみに注目を集めています。
委員会の過半数は社外取締役でなければならず、社内政治に惑わされることなく客観的に報酬を決めることができます(ちなみに、株式のリターンは社外取締役を複数選任している会社の方がそうでない会社より概ね高いという結果もあります)。公平性と透明性の高い社外取締役が過半数を占める報酬委員会が、取締役の努力と外部環境を斟酌して取締役報酬を決定するのが妥当だという考え方です。

私の個人的な意見としては、業績連動部分を米国のように9割とまではいかないものの7割くらいに設定して取締役に緊張感を持たせ、報酬委員会が外部環境も斟酌しつつ業績連動部分の報酬を決定するのが望ましいのではないかと考えています。

もっとも、社外取締役がイエスマンばかりだとガバナンスが機能しないことは言うまでもありません。

かの破綻したエンロンには著名な経営学者を含む社外取締役が大部分を占めていたのですが、報酬が低く会議も少ないなど委員会が事実上機能していなかったために世界的な不祥事を招いてしまいました。外部取締役をたくさん掛け持ちしている著名人よりも、しっかり経営をチェックできる人物を選ばなければ意味がないということを如実に示した事件でした。

荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。