トランプのTwitter、経団連会長は民主主義を知らない

渡瀬 裕哉

経団連会長の「ツイッターは政策発表の場でない」の時代錯誤

経団連の榊原定征会長は10日午後の記者会見で、トランプ次期米大統領がトヨタ自動車のメキシコ新工場の建設をツイッターで非難したことについて「ツイッターは一個人、私人のつぶやきであり、大統領の政策発表ではない」との見方を示した。(日経新聞2017年1月10日)

とのことです。経団連会長のおっしゃる意味を分からないでもないですが、トランプ氏への理解を根本的に欠いている、というよりも民主主義を理解できていないと思います。

現在トランプ氏は主流派メディアと対立している上に大統領就任前なのでTwitterでの情報発信に頼らざるを得ないという側面がありますが、だからこそTwitter上での発言を軽視することは時代錯誤です。

トランプ氏のTwitterは約2000万のフォロワーを抱えています。大統領に選出された人物が国民に直接声を届けることができるメディアの価値を正しく認識するべきです。

Twitterは民主主義の新たなメディアとして認知されるべき

トランプ氏は民主主義によって選ばれた大統領です。そして、彼の選挙の勝利に際して、Twitterによる支持者への訴えかけが非常に効果的な役割を果たしたことは明らかでした。そして、現在では主流派のメディアもトランプ氏のTwitterの後追い報道に終始しています。

トランプ氏には約6300万人以上の米国市民が投票しており、トランプ氏のTwitterはトランプ氏一個人の発言と見ることは間違っています。トランプ氏の意向は多くのトランプ氏に投票した人々の声でもあると理解することは米国という民主主義国を理解する上で重要な視点です。

たとえば、トヨタがトランプ氏のTwitterを意図的に軽視したり不快感を示した場合、おそらく共和党支持者が主要な顧客であるトヨタのピックアップトラックなどは一瞬で不買運動に巻き込まれる可能性があります。米国企業も同様であり、フォードなどが米国国内に工場を回帰させることはリスク回避策として妥当です。

メキシコに立地する工場に高関税をかけることは実質的に困難だと思いますが、それらの発言を通じて米国の巨大な市場を利用した事実上の経済政策としてのメッセージを発することが可能なのです。

そして、それらの米国の消費者が構成する市場に直接的かつ非公式に訴えかける手法としてTwitterは極めて有効な手段だと言えるでしょう。

トランプ氏の外交政策の基本は米国市場を背景とした圧力だ

トランプ氏はビジネスマンとしての大統領であると捉えることが妥当です。したがって、同氏は単純な自由貿易礼賛論者でも偏狭な保護主義者でもなく、ましてグローバル化を否定する存在であると看做すことは同政権の政策的な方向性の理解として必ずしも正しいものではありません。(新たに任命される駐日大使を見ても明らかです。

トランプ氏が実施しようとしていることは、自国の巨大な市場を背景として各国に経済改革を迫る、というものであることは明らかです。自国民の感情を良く理解した上で、自国の市場の性質を言葉で操作することで、国際経済の基本的な構造を変化させようとしています。

ブッシュやオバマのような理想主義的な政権と違って、トランプ政権はグローバリズムとリアリズムの折衷のような政権だと言えるでしょう。

トランプ政権は今後中国に対して強烈な態度を更に見せ始めるものと思いますが、それらの動きは米国市場を巧みに活用しながら中国への更なる改革開放を迫る結果に繋がっていくはずです。その際、公式な場での政策発表では表明しづらいが、国民感情に訴えかけたいものについてはTwitterを積極的に利用していくものと思われます。

大統領就任後、主流メディアとTwitterなどの使い分けについて、それぞれの意味についてしっかりと汲み取っていく作業を行うべきでしょう。

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