シニアに人気の毎月分配型投信の「構造的な問題」

投資信託に毎月分配型と呼ばれるものがあります。毎月決まった金額を分配金として支払う方式の商品で、シニア層に人気があり、日本国内の株式型投資信託の4割を占める人気です。

昨年、この毎月分配型投信の3分の1(463本)が分配金を引き下げたと日本経済新聞が報じています(グラフも同紙から)。運用が芳しくない時には、元本を取り崩して分配金をまかなう「たこ足投信」になっているものも多く、それでも対応できない場合、分配金の引き下げという対応になるのです。

実は、毎月定期的に決まった金額を分配するというこの商品には、構造的な問題があると思います。それは運用による収益が不安定なのに、分配金を安定させようとしているところにあります。

多くの毎月分配型投信は海外債券や海外REITで運用しています。

外貨建ての債券の場合、為替レートによって債券の金利収入は変動します。また、低金利の環境下で利回りの低い債券を組み入れると金利収入が減るだけではなく、将来金利が上昇した場合、債券価格が下落して、元本が減ってしまうのです。海外REITは金利変動による価格の振れが大きく、為替の影響も加わりますから、収益が安定しにくいという特徴があります。

どちらも円で決まった収益を長期に渡って出し続けることはできないのです。

毎月分配型投信は年金の不足を補う金融商品として投資する人が多い商品ですが、このような構造的な問題から、どこかで帳尻が合わなくなってしまうのです。またマネー誌などで分配金の金額でランキングされたりするので、収益が下がっても分配金引き下げの決定がなかなかできず、元本を取り崩して配当していく。それでも足りなくなると最後は分配金の引き下げになってしまうという訳です。

毎月の定期収入という点ではワンルームマンション投資も、毎月分配型投信に似ていますが、こちらは家賃をそのまま受け取ることになりますから、収益が大きく変動することは、空室や設備の交換といった事態以外はありません。物件価格は変動しますが、元本を取り崩すということは出来ませんから、家賃マイナス経費がすべて手元に入ってくることになります。

為替が円高になっても、日経平均が暴落しても、アメリカが利上げしても、ワンルームマンションオーナーに直接的な影響はあまりありません。むしろ、個別の物件の違いによる影響の方が大きいのです。

金融商品と不動産なので、単純な比較はできませんが、毎月の定期的な収入を狙う商品として、どちらが毎月の収入に透明性がある商品なのかは明らかです。

■ 毎週金曜日に配信している無料メルマガ「資産デザイン研究所メール」。メールアドレスを登録するだけで、お金を増やすためのとっておきのヒントをお届けします。

■ 資産デザイン研究所のセミナーやイベントの最新情報はセミナー最新情報でご案内しています。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。