間髪を入れずに竹島問題で韓国に謝罪と賠償の要求を --- 山田 高明

寄稿

出典:European Pressphoto Agency

安倍政権はようやく韓国に対して対抗措置を取ったが、相手が対応策を固める前に、すばやく「次手」を打ってほしい。それが政権レベルでの竹島問題の提起だ。

すなわち、日本政府として、韓国政府に対して、以下の三点を公式に要求する。

1・竹島を侵略した事実を国家として公式に認め、謝罪し返還に応じること。

2・李承晩ラインの被害者に対して個別に謝罪し賠償すること。

3・加害の事実を歴史教科書に記すこと。

要求を拒むなら、即座に国際司法裁判所へ提訴する。対応としては遅すぎたが、本来当たり前のことばかりだ。以下、改めてこの問題の経緯と本質を整理したい。

李承晩の暴走によって生まれた日韓の火種

竹島は元から日本領だったが、戦後日本の領土範囲を正式に確定するサンフランシスコ講和条約の協議過程においてもそれが認められ、韓国にもラスク書簡をもってその最終通告が行われた。こうして1951年9月、同条約が締結された。つまり、米英以下、日本と講和した連合諸国は、竹島が正式な戦後日本の領土であると認めている。

1952年1月、韓国の李承晩は勝手に日本海を線引きし、竹島を奪った。問題は韓国が竹島とそれに付随する領海を侵略しただけではない。極めて異様なのは当時、朝鮮戦争の最中であり、しかも日本が韓国側に立つ友邦側だったことだ。日本は米韓軍の兵站を担い、半島からの難民を保護し、米軍の要請で死者まで出して掃海任務を行っていた。

他方、朝鮮戦争前から国内で何十万もの人々を虐殺していた李承晩は、戦争が勃発すると、指揮も責任も投げ出して逃亡した。だが、マッカーサーが仁川上陸作戦を成功させ、ソウルを奪還すると、また中央に戻ってくる。そして、戦況に余裕が出たのを見て、竹島を奪いにかかったのだ。しかも、「対馬領有宣言」を発していたように元々本命は対馬だった。ある仮説によると、李は朝鮮戦争の直前、反体制派と見なした人々を各地で虐殺しつつ、対馬侵攻のために軍を南部に移動させ、そこを北朝鮮に突かれたともいう。

いずれにしても、勝手に日本海を線引きした李承晩は以後、日本漁船の拿捕を繰り返し、4千人近くの日本人を拉致抑留し、海上保安庁船舶を攻撃した。そして、捕えた日本人を人質として、数百名の韓国人犯罪者釈放要求などの恐喝外交を行った。

以上の経緯を見ると、李承晩は極めてアブノーマルな人物だったことが分かる。もともと終戦後、新韓国の指導者として有望だった宋鎮禹・金九・呂運亨の三人が次々と暗殺され、残ったのが南部単独政権樹立を掲げる李承晩だった。暗愚で残忍な彼は、悪逆非道な独裁政治を行い、韓国をアジアの最貧国に転落させた。

ところで、当時を知る人は、仮に呂運亨が初の大統領だったら、韓国は戦後の暗黒時代を経験することもなく、日韓は普通に仲が良かっただろうと言う。つまり、日本が“植民地支配”を行ったから戦後の韓国の対日感情が悪いのだろうと、私たちはつい歴史の構造に原因を帰して勝手に合点しがちであるが、それは何か納得できる理由を求める心理が生んだ錯覚に過ぎず、実際は李承晩がほとんど個人的に作り出した問題だったというのが事の核心かもしれない。こういう人物が初代大統領だったことは、韓国にとっても日韓関係にとっても本当に不幸だったと言わざるをえない。

竹島侵略問題の本質――押さえておきたい5つのポイント

さて、この問題の性質について、よくまとまった文章がすでに存在しているので、これを丸々、引用させていただきたい(*傍線は筆者の手による)。

  • 第一に、これは戦後、わが国に対して行われた侵略行為であり、戦争犯罪である。具体的には、韓国の犯した罪は、「他国の領土を侵略して奪った罪」「民間人の虐殺・強制連行・虐待の罪」「他国の市民を人質として外交的要求を飲ませた恐喝と強要の罪」等だ。

  • 第二に、犯罪者の逆ギレに等しい韓国側の異常な態度だ。己の戦争犯罪等を直視しないばかりか、事実を逆さまに書き換え、日本を加害者に仕立て上げている。竹島が自国領である根拠も説明せず、国際司法裁判所にも出廷せず、植民地時代に盗まれた等の嘘を吹聴し、日本側の主張はすべて「挑発・妄言」と決め付け、自身の犯罪を正当化している。

  • 第三に、これは日本側にとって「開戦事由」である。韓国は日本を侵略し、民間人を虐殺した――これは日本の主権と領土を侵し、日本人の生命を奪った「戦争行為」だ。よって、日本には加害国の韓国に対して宣戦布告し、報復攻撃を行う権利がある。

  • 第四に、戦後に関しては請求権が存在する。1945年8月15日以前に関しては、日韓両国が長期に協議し、条約を締結したことにより、一切の請求権が消滅した(=解決済み)が、「竹島侵略問題」はそれ以後の出来事である。

  • 第五に、2012年8月、韓国は再度、この問題で日本を挑発し、外交的解決を拒絶した。大統領の李明博は、強奪した日本の領土に上陸し、日本側の親書をつき返した。これは韓国が自分のほうから宣戦布告したのと同じだ。韓国はついに一線を越えた。

以上、竹島侵略問題はその悪質性において類がない。韓国は自身の卑劣な犯罪から免れることはできない(出典:「誅韓論」(晋遊舎)P282~283)

以上のうち、三番目は、原則的にいえばそうかもしれないが、かなり物騒なので、私としてはさすがにパスしたい。ただ、本来そういう権利があるし、他の国だったら躊躇なくその権利を行使しているだろう、ということは知っておいたほうがいい。この四番目の「戦後に関しては請求権が存在する」点は、私からも強調しておきたい。

「我慢」したらナショナリズムは悪化するだけ

以上をみると、本来、日本政府が竹島問題を重要な争点にしてこなかったこと自体がおかしいように思われる。また、日本が教科書に竹島を自国領として載せたりすると、加害者である韓国側が悪罵の限りを尽くしてくるというのも異常だ。こういう加害者側の逆ギレ・居直り得に対して、日本は断固たる対応をとってこなかった。

しかし、竹島問題は一方的な被害者である日本が譲歩する筋の問題ではない。冒頭で述べたように、すばやく「次手」として放ってほしい。仮に韓国が謝罪と賠償を拒むのなら――そうするだろうが――さらに三手、四手とあるし、私にもアイデアがある。

また、韓国と対峙するにあたり、しっかりしたロジックのある声明を出すことが重要になる。「(極めて)遺憾である」という菅官房長官の声明は、国内的にはウケはいい。しかし、中身のない声明は、海外では取り上げる価値すらないとしてスルーされている。日本には本当に対外的に「報道官」の役割を果たしている有能な人材がいない。あの、言いたい放題の中国の報道官のような、饒舌な人材を用意してほしい。でないと、百倍言い返してくる韓国に負けてしまうだろう。私からは橋下徹氏を推薦したい。

最後に、こういうのは「我慢」しては駄目だと言っておきたい。なぜなら、我慢すると、かえってナショナリズムが悪化するからだ。いくら我慢したところで、それは無くならない。潜在意識下に怒りを抑圧するだけである。それは限界を超えた時、暴発する。だから「我慢」すると、かえって危険なのだ。お互いに言いたいことを言って、落としどころを探るのが外交である。よって、慰安婦像問題の対応でまるで日本側が悪いように言っている朝日新聞と民進党の岡田氏は、単に「仲間を背中から撃って」いるだけでなく、国内のナショナリズムをプレスし、逆に増大させているのだ。朝日新聞は歴史的に見て常に日本の世論を誤導してきたから、どちらの姿勢が正しいかは言うまでもない。

韓国は三代続けて日本を悪罵する敵対的な大統領を誕生させ、隣国とまともな関係を築こうとはしなかった。どうせ次の大統領も反日なのだから、一切の遠慮は無用だ。外交戦を風林火山に例えれば、今は「火」の機だと思う。相手を批判するなら、中途半端ではなく徹底的に批判すべきだ。安倍政権には応変の政略を期待したい。

(フリーランスライター・山田高明 個人ブログ「フリー座」