中国語を身につけるには何文字を覚えればよいのか?!

尾藤 克之

正面講師が陳氏

以前、某上場企業に顧問として在籍している際、オンライン中国語事業をゼロから立ち上げたことがある。当時、中国語は発音が重要だと考えていた。発音には単母音と複母音がある。単母音は口唇の開き方を変えて発音する。漢字音は1音節で、母音または子音+母音からなる。子音と母音の組み合わせがわかれば正確に発音できるようになる。

また、中国語は1つの文型(主語+述語+目的語)で表すことに特徴がある。しかし、英語の主語、述語、目的語や補語などの概念で考えたり、助詞と置き換えるとさっぱりわからなくなる。正しい発音方法と文法を手軽に学べるスキームは、一見するとビジネスチャンスがあるようにも思えた。しかし期待した成果をあげることなく事業は終了した。

そのような過去の経緯があったので、正直なところ中国語に関しては苦手意識があった。『筆談で覚える中国語』(サンマーク出版)の著者であり、中国語講師の、陳氷雅(以下、陳氏)は、中国語を簡単に覚えるなら「発音にとらわれるな!」と主張する。「中国語学習において勘違いをしています。それは『発音』が大事だと思っていることです。その勘違いによって損をしています」。なかなか挑発的で興味深い。

■中国が漢字大国という錯覚

――現在、日本の常用漢字数は2136字である。これが一般の社会生活で使用する漢字の数になる。中国の場合はどうだろうか。中国には漢字しかないので漢字大国の印象が強い。

「以前、講座で取ったアンケートで中国語を習得したければ、どれぐらいの漢字を身につければいいと思いますか?と聞いたのですが、一番多く答えた人の数は“10万字”でした。中国では1975~76年にかけて、建国以来最大規模の漢字統計調査が行われました。本、雑誌、など多くの出版物において、使われていた漢字は合計して6335字でした。」(陳氏)

「漢字大国といわれる中国といえども、1万字もなかったのです。しかも、使用頻度で見ると、最常用漢字は560字、常用漢字807字、準常用漢字は1033字の合計2400字。じつに99%をカバーしていたのです。」(同)

――必要とされる漢字が2400字だから、日本の常用漢字数2136字とさほど変わらないのである。私も本書を読むまでは勘違いをしていた。

■簡体字は読めれば充分

――さらに、実際に2400字ほどの常用漢字に対して統計をとってみたところ、簡略化されているのは800字あった。日本語と同じ漢字は1600字もあり全体の3分の2を占めていた。

「必要になる常用漢字は2400字程度です。そのうち7割が日本の漢字と同じですから、覚えるのはたった800字です。しかも、簡体字を読めるだけで十分会話が成立します。中国人は日本の漢字を読めるので、日本にはない簡体字を読めるようになることが、まずは大事でしょう。書けなくてもいいですが、簡体字を見て意味がわかるようになると上達が早まります。」(陳氏)

「ルールがわかれば簡体字を覚えるのは簡単です。覚えるべき800字のうち、7割の漢字を十分に網羅すれば日常会話には困らないでしょう。」(同)

■筆談から学ぶことが得策

――冒頭の私のケースではないが、発音の重要性にとらわれすぎると、かえって挫折しかねないので注意が必要だ。では、発音を「あとまわし」にして何を優先すべきなのか。

「その答えは“筆談”です。ほかの国の人では真似できませんが、日本人であれば筆談を使って中国語を覚えたほうが、圧倒的に早く中国語で会話できるようになります。なぜ筆談がいいのか、その理由はいくつかあります。『細かい発音に左右されず確実に意図が伝わる』『文法は“動詞が前”以外は日本語にそっくり』などの理由があげられます。」(陳氏)

「ほとんどの参考書や語学教室では、まず発音からはじまります。でも、難しく挫折しがちな発音から学ぶ必要なんてどこにもありません。あえて最難関といえる発音から学ぶのは、とにかく非効率でもったいないことです。」(同)

――今回、「筆談」という方法をはじめて聞いた。実際に効果があるかはやってみないと分からないが、学習方法に悩んでいる人がいたら参考になるかもしれない。

尾藤克之
コラムニスト

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