一点突破戦術は多くの分野で応用できる!

写真ACより:編集部

固くしまった瓶の蓋を開ける時、グッと集中して力を入れますよね。同じ力を時間をかけてゆるゆると加えていたのでは、決して蓋は開きません。

釘を打つ時もコン!コン!コン!とカナヅチで集中的に力を加えます。カナヅチを釘に押し当ててじっくり押したのでは、例え「同じ力」を加えても釘は埋まりません。

戦いの戦術では、「攻撃は一点撃破」で「守りは相手の攻撃を分散させる」というのがセオリーです。ナポレオンなど歴史的な名将は、必ずこのセオリーを守っていたと言われています。

司法研修所の民事弁護の講義だったと記憶していますが、「主張は小さな主張がたくさんあるよりも、骨太の主張をドンと出した方がいい」という趣旨の説明を受けた記憶があります。

民事訴訟というのは、原告と被告が双方の主張を「準備書面」等で戦わせ、物証や人証でその主張を証明して勝敗が決せられます。当事者が出さない主張は裁判所は採用してはならず(例えば、明らかに「時効」が成立していると裁判官がわかっていても、当事者が主張しない以上は「時効」という判斷をしてはならないのです)、当事者の主張の良し悪しが訴訟の帰趨を決するケースも決して少なくありません。

例えば、取締役会による新株発行の差し止めを求めるとしたら、次のような主張が骨太の主張となるでしょう。

新株発行は既存株主の権利に大きな影響を及ぶすものであって、授権資本の範囲内で取締役会決議によって発行を許すのは「迅速な資金調達」を可能にするためにすぎない。ところが、以下のように◯◯社には、迅速な資金調達を必要とする事情は現時点で全く存在しない。

というように「そもそもの制度趣旨」から説き起こす主張が「骨太の主張」なのでしょう。
「会社の支配関係に争いがあるか否か」(会社法201条2項)に関する主張立証も大切ですが、まず「大義は当方にあり!」と主張することを忘れてはなりません。

説得や交渉でも、小さな材料をたくさん並べるよりも「骨太の主張」を述べた方が説得的になるはずです。
セールスでも「本製品がお客様の真のニーズ(経費節約、利便性の向上などなど)に最も合致していると確信します」というふうに、顧客の最大の関心事をピンポイントで攻めるのが効果的です。

例えは古いですが、「宇宙戦艦ヤマト」の波動砲のようなもので、エネルギーを120%充填してから一気に発射するのです(120%というのが今でもよく理解できないのですが…^_^;)。

恋愛ももしかしたら同じようなものかもしれません。
時間をかけて少しずつ友達関係を維持していると「恋愛に発展しない長すぎた春」になるという話を聞いたことがあります。一気呵成にドラマを演出した方が成就する可能性が、もしかしたら高いのかもしれません。この点については、その道に詳しい方のご意見をうかがいたいと思います。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。