【映画評】マグニフィセント・セブン

渡 まち子

ローズ・クリークの町の人々は、冷酷非道な実業家ボーグに支配され、絶望的な日々を送っていた。ボーグに夫を殺されたエマは、なけなしの金で賞金稼ぎのサムを雇う。サムは、ギャンブラーのジョシュをはじめ、スナイパー、暗殺者、流れ者など、腕に覚えのあるものを集める。集まった7人は最初は金で雇われた寄せ集め集団だったが、やがて町を守るための正義の戦いに身を投じるうちに、目的は金だけではなくなっていく…。

黒澤明監督の傑作「七人の侍」と、それをリメイクした秀作「荒野の七人」を原案とした西部劇「マグニフィセント・セブン」。腕の立つ7人の強者たちが町を守るという大筋は同じだが、オリジナルに敬意を払いつつも、随所に現代的な設定が施されている。7人を雇うのは勝気な未亡人で、彼女は「望むのは正義。復讐はその手段」ときっぱりと言い切る気丈な女性だ。リーダー的存在のサムは黒人で、集められるメンバーの人種も多様である。何といってもアクションがド派手だ。圧倒的な人数の敵に対し、拳銃、ナイフ、弓矢はもちろん、創意工夫を施した武器と戦法で応戦。ハリウッド映画名物の大爆発もちゃんと用意されている。だが、アクションの比重が増えた分、人間ドラマはやや薄味になった。村人(本作では町だが…)との交流や恋愛要素はあっさりとカットされているので、一人一人の背景が見えないのは少々残念。

それでもアントワーン・フークア監督は、最後に変化球を用意している。凄腕の賞金稼ぎのサムには意外な思惑が。ここで、映画は「七人の侍」からセルジオ・レオーネ監督の「ウエスタン」へと一気に傾く。黒澤映画「用心棒」との因縁があるレオーネ。「ウエスタン」と「荒野の七人」の両方に出演したC.ブロンソン。無名時代、ブロンソン主演の「狼よさらば」にチョイ役で出ていたデンゼル・ワシントン。そして、デンゼル演じるサムが仕事を引き受けボーグを狙う本当の理由。すべてがつながっていて、映画の不思議な連鎖を感じてしまった。マグニフィセント(気高い、崇高な)とは少し違う色合いを帯びるので、複雑な余韻が残るのだが、ラストに鳴り響く「荒野の七人」のテーマソングを聞けば、そんなモヤモヤは一気に吹っ飛んでしまうはず。デンゼル・ワシントンとイーサン・ホークの「トレーニング・デイ」コンビや、いい意味での軽さがあるクリス・プラットは好演だし、イ・ビョンホンも存在感をきちんと示している。西部劇初心者にもおすすめのスター映画に仕上がった。
【65点】
(原題「THE MAGNIFICENT SEVEN」)
(アメリカ/アントワーン・フークア監督/デンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、他)
(リスペクト度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年1月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。