【映画評】破門 ふたりのヤクビョーガミ

渡 まち子

提供・松竹株式会社

建設現場で暴力団対策の仕事、いわゆるサバキをしている建設コンサルタントの二宮は、仕事を通じて、二蝶会の強面ヤクザ・桑原と知り合って以来、何かとトラブルに巻き込まれている。ある時、二宮はうさんくさい映画プロデューサーの小清水がもってきた映画出資の話を二蝶会に紹介するが、小清水が大金を持って消えてしまう。出資詐欺師の小清水を追って、桑原と二宮は奔走するが…。

腐れ縁のヤクザと建設コンサルタントが、詐欺師を追いながら、次から次へとトラブルに巻き込まれていく様を描く「破門 ふたりのヤクビョーガミ」。原作は、黒川博行の直木賞受賞作で、原作小説の5作目を映画化している。キレたら手がつけられないインテリやくざの桑原と、サバキというグレーな仕事で何とか食いつないでいる、ぐうたらで貧乏性の建設コンサルタントの二宮は、互いを自分にとっての疫病神と思いながらも不思議な腐れ縁で結ばれている凸凹コンビだ。原作ファンやTVドラマファンにとってはおなじみのストーリーなのだろうが、なぜ初の映画化で第5作なのだろうか?二人の出会いを描くところから始めるべきなのではないのか??との疑問がよぎるのは私だけではないはずだ。まぁ、企画、その他の大人の事情があったであろう、そのことはひとまず脇に置いておく。

全編がコミカルな大阪弁でテンポがいいのが本作の最大の魅力だ。キャストのほとんどが関西出身というだけあて、違和感がないところは、同じ黒川原作の映画化「後妻業の女」によく似ている。出資詐欺に遭い大金を持ち逃げされる、大組織のヤクザの組とトラブルに発展してしまう、など、状況は絶体絶命ながら、それを大阪弁で描くと、なんだか漫才を見ているよう。佐々木蔵之介、横山裕共に好演だが、何と言っても群を抜いて上手いのは、ベテランの橋爪功だ。うさん臭くて、嘘つきで、懲りない性格の映画プロデューサーをひょうひょうと演じていて、最高である。どんな手を使ってでも資金を集めて映画を作るそのド根性。これもまた映画愛!なのだ。
【60点】
(原題「破門 ふたりのヤクビョーガミ」)
(日本/小林聖太郎監督/佐々木蔵之介、横山裕、北川景子、他)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。