まず明らかなのは、こども国債で借りた金を使うのは親だということです。すべての教育を無償化すると文部科学省の予算は毎年10兆円ぐらいになり、公共事業費の2倍になります。ただでさえ赤字で大変な日本の財政はますます苦しくなるので、国債の発行も増えますが、親は国からもらった金を使えます。
こどものみなさんは助かるでしょうか。ちょっと考えると、昔のように頭はいいのにお金がないから大学に行けないこどもが減って助かるような気もしますが、こういうこどもを減らすには無償化する必要はありません。今の奨学金のように、お金を貸せばいいのです。大学を卒業すると生涯所得は5000万円ぐらい増えるので、授業料400万円ぐらいは返せます。
いま問題なのは、逆に頭が悪いのにお金があるから大学に行くこどもが多すぎることです。行くのは自由ですが、そういうこどもにも1人年16万円の私学助成金が出ています。国立大学とあわせると、1兆5000億円のお金が使われています。
大卒だといいことがあるのは昔の話で、今は偏差値の低い大学を卒業しても、企業の採用は高卒と同じ扱いです。何も役に立つことは学べず、4年間働かなかったぶん損します。つまり「こども国債」は親が借りてこどもが返す借金なのです。
「教育を充実したら経済成長して税収が増えるので国債は返せる」という政治家がいますが、これはまちがいです。大学は肩書きの価値は大きいが教育の中身はないので、成長率は上がりません。大卒の所得が増えるのは、大卒でないと幹部になれないからで、大学で勉強した知識が役に立つからではありません。
日本はこれから人材で生きていくので、教育に力を入れる必要がありますが、大学教育にいくらお金を使ってもだめです。こどもの頭は8歳ぐらいまでに固まってしまうので、小学校高学年以上は、いくら詰め込み勉強しても成績はあまり変わりません。大事なのは小さいころの幼児教育なのです。
ところが日本では、幼稚園とは別に「保育園」というものがあり、こどもを預かって遊ばせています。こういうむだな制度をやめて幼稚園だけにし、小学校の入学年齢を下げるべきです。OECD(経済協力開発機構)は5歳入学をすすめています。幼児教育にはバウチャー(金券)のような形で(公立・私立を問わず)補助するのがいいと思います。
「教育無償化」で税金をばらまいても、教育の質は上がりません。これから人口が減る時代には無意味な大卒を量産するのではなく、高卒や中卒で就職しても一生勉強できるしくみをつくるべきです。少なくとも定員割れになっているような私立大学に国のお金を出すべきではありません。それは社会的には無駄づかいだからです。