【映画評】エイミー、エイミー、エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方

渡 まち子

幼い頃、離婚した父親から、一夫一婦制を全否定されてきたエイミーは、その影響で真剣な恋愛ができず、男性とは一夜限りのつきあいと割り切って自由奔放に生きている。NYでゴシップ雑誌のライターをしている彼女は、取材でスポーツ外科医のアーロンと出会う。今までの男性とは違う真面目で誠実なアーロンとのつきあいで、それまでの恋愛観や人生を見つめ直そうとするエイミーだが、過去の自分が邪魔をして、アーロンとの間に亀裂が入ってしまう…。

恋愛恐怖症のヒロインが本当の恋を知って人生を見つめ直す恋愛コメディー「エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方」。主演のエイミー・シューマーは、日本での知名度は低いが、全米ではトップクラスの人気のコメディエンヌだ。女優の他に、脚本や製作もこなす知的なエンターテイナーとしても知られている。特別な美人ではないが親しみやすいルックスと、下ネタも含む本音トークが嫌味や下品にならない明るいキャラで、ファンだけでなく、業界内でも大人気なのだ。それはこの決して上品とはいえないラブコメに出演する、豪華俳優の顔ぶれを見てもわかる。

女癖の悪い父親に共感するエイミーと違い、結婚し子どもを育てる出来のいい妹役はブリー・ラーソン、エイミーの鬼上司にティルダ・スウィントンとオスカー俳優が並ぶ。その他にもスポーツ界から、本人役でレブロン・ジェームズが出演するのを筆頭に、カメオ出演も超豪華だ。そんなエイミー・シューマーが演じるヒロインは、いろいろとこじらせていて恋愛に臆病になっている。トイレでの女子トークや、決してお泊りしない(させない)ルールで爆笑させ、随所に登場する映画ネタでシネフィルの心をくすぐる。下世話な下ネタも、どこかとぼけた天然のエイミーが言うと可愛らしいから不思議だ。

しかもこの映画、ただのおバカコメディーではない。安定的な恋愛ができない女性と、ピュアで真面目な男性が、互いのダメな部分も含めて本当に理解し合い愛を育む物語は、実にいい話で、胸を熱くさせてくれる。クライマックスの、文字通り身体をはったシークエンスは、ありえない!と思いつつ、拍手を送ってしまった。いかにもB級ラブコメ風のタイトルに惑わされてはいけない。なかなかの拾い物の佳作なのである。

【70点】
(原題「TRAINWRECK」)
(アメリカ/ジャド・アパトー監督/エイミー・シューマー、ビル・ヘイダー、ブリー・ラーソン、他)
(女子あるある度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月21日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。