株式会社日本経済新聞出版社から『成功企業に学ぶ 実践フィンテック』という本を上梓しました。明日23日より全国書店にて発売が開始されます。
本書を私は、主として学者や金融分野の評論家達が執筆されている入門書とは一線を画するものにしたいという思いから、フィンテック革命を起こそうと日夜奮闘している企業経営者達を中心に置く形にしました。
私は彼らを、此の革命を実現しようとしている戦士達と位置付けています。夫々の戦士(経営者)がどのような夢(ビジョン)を描き、それをどのような戦略と武器(技術)で具現化しようとしているのかをありのまま書いて戴くことにしました。私は編著者ということではありますが、彼らに一切の注文も愚見も申しておりません。
私自身も第1章から第2章までを執筆しましたが、それもSBIグループの経営者として極めて戦略的かつ実践的なものとしました。また、その原稿も他の執筆者に読んで貰っていません。それは私の拙い原稿を読んで、彼らが何らかの影響を受けるといけないと思ったからです。
「まえがき」を除いて全ての章の原稿は完成していたのですが、私は敢えて「まえがき」を書くのを遅らせていました。それは、此の革命が如何に我々の身近に迫っているかを示す具体的な証左が発表されるのを一日千秋の思いで待っていたからです。
その証左とは、2017年3月2日に正式発表され、翌日には内外の様々のメディアで大きく取り扱われた、あるコンソーシアムでの実証実験の成功です。国内銀行の3分の1以上にあたる47行が参加している「内外為替一元化コンソーシアム」が小口・高頻度のブロックチェーンの技術を活用した決済プラットフォーム「RCクラウド」の実証実験に成功し、年内にも商用化するということでした。
此のプラットフォームは私どもSBIのジョイントベンチャーのパートナーである米国Ripple社の次世代決済基盤をクラウド上で実装したもので、世界初のものです。之により、ほぼリアルタイムで、従来の10分の1程度の低コストでの送金も可能となります。現在、モバイルデバイス向けの「送金アプリ」を開発中で、正に「送金革命」が今年中に具現化されるということです。
もう一つの証左は、あるサービスの躍進です。ロボアドバイザーサービスを提供しているウェルスナビ社が私どものSBI証券と提携したサービスは、2017年1月末に開始して僅か20営業日で申込件数が6000口座を突破、顧客からの預かり資産は25億円にもなったのです。
此の2つの証左から、金融機関自らが新技術を逸早く取り入れ、顧客の便益を高めないと競争に敗れ生き残りが難しくなるのは必定です。
各金融機関は、今回のフィンテック革命はこれまでのインターネット革命とは比較にならない程のインパクトがあるという認識を持たなければならないと思います。何故なら我々の顧客も、従来の個別金融機関に対するロイヤリティを無視して、極めてセンシティブに自らの便益の向上に反応することは間違いないからです。
早急に変われない金融機関からはどんどん顧客が去って行き、既存の金融秩序は短期間で破壊されて行くことになるでしょう。之は世界中で同時に起きる革命であることも付け加えて置きます。
私を含めて本書を執筆した経営者達17名は今後一層、自我作古(我より古を作す)の決意を新たにし、此の革命を完逐して行くことが結果として「世の為人の為」になると確信すべきでしょう。
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