4月1日生まれの謎

荘司 雅彦

写真ACより(編集部)

民法では、期間の計算について「初日不算入の原則」を採用しています。

たとえば、4月1日にお金を借りて「1年後に返済する」という約束をすれば、翌年の4月1日の午後12時までに返済すればいいのです。

つまり、借りた当日である4月1日は計算に加えず、翌日の4月2日から丸々1年経過する翌年の4月1日午後12時が返済期限になるのです。

なぜこのようになっているかというと、4月1日の正午にお金を借りたとしたら、その日は半分しか残っていませんよね。午後10時に借りたら2時間しか残っていません。午前0時に借りることは滅多にないので、中途半端な時間(先の例で言えば半日や2時間)は切り捨てる方が常識的だと立法者が考えたからです。

ところが、年齢計算は例外になっています。
「年齢計算ニ関スル法律」は、年齢は出生の日から起算するものとし初日不算入の例外を定めています(年齢計算ニ関スル法律第1項)。そして、その期間は起算日応当日の前日に満了する(年齢計算ニ関スル法律第2項、民法143条準用(同条2項参照))と定められています。

つまり、4月1日に生まれた人の年齢は4月1日から起算し、翌年の3月31日の午後12時に満了することになります。
3月31日の午後12時に一つ年をとることになっています。

ここで素朴な疑問が浮かびますよね。
「3月31日の午後12時と4月1日の午前0時って同じじゃないか?」という。

この点に関しては、「前日午後12時」と「当日午前0時」は時刻としては同じであっても「属する日」は異なると解釈されています。あくまで、日としては異なるということです。

だから、4月1日生まれの人がひとつ年を取るのは翌年の3月31日ということになり、学校ではその年度に生まれた人と同じ学年になります。3月30日に生まれた人と同じ学年ということになり、4月2日生まれの人より一つ上の学年になるのです。

どうして年齢計算に関して「初日不算入」の例外としたのか、私にはわかりません。
4月1日生まれの人と翌年の3月31日生まれの人が同じ学年という方が常識的にもわかりやすいと思うのですが…。

余談ながら、いわゆる「早生まれ」の子供は、中学受験ではいささか不利なようです(小学校や幼稚園受験の事情は知りませんが、良心的な学校であれば生まれ月も斟酌しているのではないかと思っています)。
12歳くらいだと、1年の成長の違いがかなり影響することがあるからです。

わが娘は「早生まれ」だったので、算数の成績に大きな波がありました。
受験直前になってようやく安定しましたが、親としてヒヤヒヤさせられたことは確かです(笑)

荘司 雅彦
2017-03-16

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年3月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。