中国の反体制派メディア「大紀元」が昨年10月20日に報じた記事「6人の現代の著名科学者、彼らは何故神を信じるのか」のリード文を先ず読んで頂きたい。
「国連がある面白い統計を発表しました。現在から過去に遡って300年の間、世界における素晴らしい科学者300人を対象に、神を信じる人が何人いるのかについて調査しました。すると、8~9割の科学者たちが神を信じていることが分かりました。
300人の内、神を信じないと示した人は僅か20人でした。一方、神を信じると明確に示した人は242人で、世界的に著名なニュートン、エジソン、X線を発見したヴィルヘルム・レントゲン、電池を発明したアレッサンドロ・ボルタ、アンドレ・マリ・アンペール、ゲオルク・オーム、キュリー夫人、アインシュタイン等々がその中に名を連ねています。また、20世紀におけるイギリス、アメリカ、フランスの科学者の中で9割以上が神を信じることも明らかになっています」
「大紀元」はアインシュタインをはじめ、ハーバード大神経科学者アイベン・アレクサンダー博士、そして量子力学創始者マックス・プランクまで6人の著名な科学者を紹介し、彼らが神を信じていた、というのだ。例えば、アレクサンダー博士は自身が臨死体験(NDE)を体験してから、神を信じるようになった科学者だ。同博士はその前は、「NDEは大脳が圧迫を受けた結果の幻想に過ぎない」と考えてきたという。
一方、このコラム欄で紹介したばかりだが、イスラエルの若き歴史家、ユバル・ノア・ハラリ氏(YuvalNoahHarari)は、「宗教は本来、神々とは何も関係がない。どこから権威が由来するかを説明し、その機関(宗教団体)や法(教え)を正当化してきた歴史だ」という。そして「ビック・データのアルゴリズムが決めた決定に対して信頼することが21世紀の支配的なイデオロギーとなるだろう」と予想している。同氏が主張しているホモ・デウスと呼んでいる内容だ。「ちょうど昔の神々のように、人々は全能なアルゴリズムとデータ主義が決めたことを信仰するようになる。彼らは人間より迅速に正確に決定できるからだ」と述べている(オーストリア代表紙プレッセとのインタビュー2017年3月28日)。
興味深い点は、誰よりも迅速に正確に返答できる能力が“未来の神像”の必須条件とみなされていることだ。ただし、この迅速性、正確性は従来の神観の一部に過ぎない。「全知全能なる神」という場合がそれに当たる。しかし、キリスト教の神は全知全能だけではなく、「神は愛だ」と主張してきた。ハラリ氏の宗教観、神観は時代が求める神観であることは間違いないが、かなり部分的な神観だ。
「大紀元」で紹介された科学者たちはハラリ氏の見解をどのように受け取るだろうか。ハラリ氏のような知識人、学者が今後、確実に増えるだろうし、その一方で不可知論者も増加するだろう。
マックス・プランクは1944年、イタリア・フィレンツェで「物質の性質(TheNatureofMatter)」について講演している。「大紀元」の記事から引用する。
「すべての物質はある種の力の影響下でのみ創造と存在ができる。この力は一つの原子粒子を振動させ、最も微小な『原子太陽系』を支えている。この力の背後には意識を持つ、知恵の心が存在することを仮設しなければならない。この心こそが全ての物質の母体であるのだ」
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。