日経新聞のトランプ政権論評のデタラメぶりが際立つ
という日経新聞の記事が掲載されました。この内容があまりにも事実誤認に基づくデタラメであるため、日経新聞のクオリティーペーパーとしての信頼性が揺らぐのではなかと驚きました。
しかし、秋田氏の名前を見て納得、以前にトランプが極右 !? 日経新聞へのエール(笑)でも書いたように、現地取材もろくにせずに伝聞と想像だけでトランプと共和党保守派をディスる文章を書いているのだから仕方がないかと思います。
話にならない事実無視、そして取材不足の論評
今回のシリア空軍基地へのトマホークによる攻撃について、同記事中では
<秋田>
こんな体制で強行された今回の攻撃は、長期の中東戦略を描き、満を持した末の行動のようにはみえない。
<事実>
⇒トランプ大統領は1月27日に軍備の即応体制を整備するように大統領覚書を発し、その翌日にはシリアとイラクのISISを一掃する大統領覚書にもサインしています。その結果としてマティス国防大臣から1か月後に中東における軍事計画がトランプ大統領に提出されており、イラクとシリアへの地上軍の派兵が小規模ながら進みつつあります。(この計画内に今回の件もオプションとして入っていたと見るべきです)
⇒また、ダンフォード統合参謀本部議長とゲラシモフ参謀総長(ロシア)はアゼルバイジャンで事前に接触し、軍事機関同士のホットラインもできています。今回、米軍はロシア軍に対して事前に連絡していたのもこのためです。
⇒当然ですが、トマホークを積んだ艦船を思い付きで中東に配備しているわけでもなければ、何の計画もなくシリア空軍基地を攻撃することは有り得ません。
<秋田>
それでも、今回の行動は性急すぎると言わざるを得ない。正当な攻撃であることを証明するための事前の努力が、あまりにも足りないからだ。シリアが化学兵器を使ったのなら、国際法違反であり、人道的にも許されない。ならば、国連安全保障理事会に証拠を示し、少なくとも議論を交わすべきだった。
<事実>
⇒シリアでは2013年にアサド政権が化学兵器を使用しており、当時もオバマ大統領がレッドラインを越えたら軍事介入すると明言(しかし、ほぼ何もしなかった。)
⇒2011年のシリア内線勃発以来、国連における非難決議は7回。(ロシア・中国が拒否権発動)直近は今年の2月28日。
⇒ニッキー・ヘイリー国連大使は国連安保理でサリンで倒れた子どもの写真を掲げて演説し、米英仏は化学兵器使用を批判し、真相究明に向けた調査に関する決議案を提出。(少なくとも議論は行われている。アサドを守るロシアが聞く耳を持たないのは前提)
<秋田>
この攻撃はさまざまな副作用も生みそうだ。まず考えられるのが、中ロによる一層の接近だ。両国には根深い不信感が横たわるが、米国に対抗するため、静かに枢軸を強めるだろう。
<事実>
⇒中国報道官が「冷静さと抑制した対応を維持し、情勢をさらに緊張させないよう求める」と述べ、シリアで猛毒のサリンとみられる化学兵器が使用されたとみられる空爆については「厳しく非難する」と述べ、 真相解明に向けて国連機関による独立した調査が必要だとの考えを示した。(産経新聞)
⇒ロシアは化学兵器は反体制派が保有していたものであり、空爆の際にそれが飛散したものとしているため、中ロの立場は異なるものとなっています。米中首脳会談に被せたこともあり、中国の反応は極めて抑制的です。(ロイター)
<秋田>
こうした問題を精査し、トランプ氏に進言できる側近は少ない。ティラーソン国務長官や、最側近の娘婿であるクシュナー上級顧問はビジネス界出身だ。2人を知る元米高官は「実務や交渉力は優れているが、外交経験はない。危機への対応力は未知数」と語る。
<事実>
⇒本件はマティス国防長官とマクマスターNSC議長主導のものであり、両氏ともに中東政策を専門とする戦略家です。また、キャスリーン・マクファーランド副補佐官も中東に強く、NSCに復帰したCIA長官のマイク・ポンぺオも中東問題に熱心な下院議員でした。
⇒ティラーソンやクシュナーは中東政策について一定の影響力はあるものの、この問題を精査し、トランプに進言できる側近が2名しかいない、というのは、トランプ政権に対してあまりに無知。
・・・とまさに、事実誤認と取材不足のオンパレード。中学生の文章かと思いました。
日本経済新聞は「偉い人」が書いたからといって駄文を掲載するな
日本経済新聞は「自社の偉い人」が書いた文章だからといって無批判に記事を掲載することは慎むべきです。少なくともジャーナリズムを名乗るのであれば、最低限思い込みではなくファクトベースで語る習慣を身に付けてほしいと思います。
日本のメディアも「トランプ政権」が誕生したことを受け入れて、リベラルの狼狽という醜態をさらし続けることをそろそろ恥ずかしい事だと認識するべきです。
日経新聞内にも当然事実について気が付いている人も多数おり、駄文を掲載することを読者に申し訳ないと思っている記者・編集者もいるはずです。しかし、筆者は自社の偉い人にすら抗議できないジャーナリストがジャーナリズムを守れるとは思いません。是非ジャーナリストとしての矜持を取り戻してほしいと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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