なぜマネー誌は株式の銘柄選択特集をやめないのか?

毎月21日はマネー専門誌の発売日です。日本には3大マネー誌があり、今月も日本経済新聞に広告が掲載されています(写真)。最新号を見ると特集はどれも日本株の個別銘柄の選択法ばかりです。

株式をはじめとする金融資産を使った投資に関しては、銘柄選択やタイミングを考えるアクティブ運用よりも、市場平均に連動させ投資のタイミングを考えないインデックス運用の方が優れているというのは、業界では常識です。アメリカの伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏でさえ、個人投資家にはインデックスファンドで投資した方が良いとアドバイスしています。

過去の運用実績を見ても、プロのファンドマネージャーが運用するアクティブファンドが市場平均を上回っているのは半数程度。個人投資家が自分で銘柄選択をすれば、その勝率はさらに落ちていると思われます。

つまり、時間をかけて銘柄を選ぶことには、ごく少数の億万長者を生み出すものの、全体で見れば投資成果を向上させることはないのです。それにもかかわらず、正しい資産の増やし方を指南すべき立場にあるマネー誌が、このような特集を続けるはナゼでしょうか。

それは株式投資においてインデックス運用でタイミングを考えない方が良いということになると、マネー誌自体の存在価値を否定することになってしまうからです。インデックスファンドのコストとアセットアロケーションだけを記事にしても面白くないし、コンテンツが無くなって、雑誌として成り立たなくなります。

私が考える金融資産の運用は、それほど複雑なことではありません。コストの低いインデックスファンド(投資信託)を選び、投資対象の違うものを組み合わせるアセットアロケーションに力を入れる。そして、タイミングを考えずに自動積み立てで毎月資産を積み上げていく。シンプルですがこれが1番効率的な運用方法だと思っています。

後はNISAや確定拠出年金といった税制上有利な仕組みを上手に活用する。税金のメリットを取ることに力を入れる方がずっと重要です。

アクティブファンドの中にも市場平均を上回る素晴らしいファンドが存在するのは事実です。しかしそのようなファンドを、国内に5000本あると言われる中から事前に見つけ出すことができるのか?そのためには膨大なコストとエネルギーがかかると思います。

であれば最初からインデックス運用で着実に平均を取りに行ったほうがいい。これは私が20年以上金融機関で運用の仕事をしてきて到達したシンプルな結論です。

アクティブに銘柄を選ぶ作業は、金融商品よりも市場の効率性が低い不動産のような実物資産でやる方が良い。マネー誌も金融商品のアクティブ運用特集から、実物資産の選び方に軸足をもっと移しても良いのではないでしょうか。そんなコンテンツであれば、いつでも資産デザイン研究所が大量に供給することができます。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年4月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。